(現世こそが全てであった、既に生を終えた者の終焉。)
└とても胸を締め付けられました。
ベアテが生きた瞬間は、美しき水に目を輝かせ心を開いて生き守ろうと感じたあの瞬間こそが命だった。其れが散った瞬間、全ては死の眠りに付いたのだ。残された燃え滓のようなドゥヴァの命が終わる意味が有ることだけ素晴らしいことだとしても、最早意味等無い。残されるあの魔法使いの人生に関わることなど出来やしない。全てが分かたれた道の先、生き切ったと言い切れるだろうか。言い切れないだろうか。其れすらも考えることを辞めていた。有りのまま今の瞬間を見つめ、熱狂に散る事は素晴らしき事?まさか――。
鈍色の緞帳が下に落ち、画面が真赤に染まる。目まぐるしい死の舞踏の招待状は少年から他人へと渡された。)
└無声映画のように静かに描かれる最期のときに胸が苦しくなりました。領主さまの息子という立場でなければまた違った未来が開かれたのかなとも思うのですがそれもまた幸福とは呼べないでしょうし、ドゥヴァくんにとって“ベアテ”として美しい湖を見られたことがたったひとつの救いになるかといえばそうではないことがたまらなく苦しくもあるのですが、それでも短いいのちを懸命に生きたことには違いないのだと、せめてそのなきがらだけでもぎゅっと抱きとめたいです…。
ドゥヴァは死ぬことを前提として作ったPCでした。安倍様よりドゥヴァの設定では限りなく死に近いが大丈夫かというお話をかねてより伺っておりました。ラストイベントは本望と言えば本望ですが、死に急ぎすぎた感は否めません。特に裏もなく表もなく、領主様のご落胤で、母は穏やかな商家の娘で、祖父の犯罪により奴隷となったが領主様は母を愛していており、母の面影を残すドゥヴァを嫌っていた、なんてとんでもない設定でした。その他のことは安倍様にお任せしておりましたが、まさかの展開ばかりで本当に驚かされました。イベントを詳しく説明致しますと、セカンドまではロールのままですが、サードあたりで愛について悩み始め、博愛に安堵を覚えています。自分の評価が地に落ちておりますゆえ、何もしていない自分が愛されるわけがない=皆が好きだからそのうちの一つという安心の仕方で御座います。フォースでは血のつながりに愛を覚えていることに気が付き、さらに安堵したものの、全てを思い出した瞬間に領主様に嫌われた記憶が、なぜこのような人まで愛するのかという悩みとぶつかって思考停止しました。そしてラスト。このような不幸に見舞われるのは特別なベアテという存在ではなく、特別ではないドゥヴァに戻ってしまったからだと思います。ノースウィンドではままある、取り留めもない、平凡な死じゃないのかな、と。だからアスターくんもドゥヴァも犬死にで、他の人もいつかは犬死にするし、その連鎖が続いていくんじゃないかな、と。そのような思いを込めてロールを打ちました。そもそも意味のある死なんてあまりないものと思いますが…。そこに意味を見出すのは残された人だけ。バルドさんに意味を見出してもらえていれば良いのですが。
Emmanuel & Philomele
「……、……。……ごめんなさい。」
└胸の内を打ち明けてくださったからこそ、ここでの「ごめんなさい」にはぐっと熱くこみ上げるものがあり、悲しいよりも切なくあたたかい気持ちになりました。
(眼差しは変わらず柔らかいままだけれど、細められた瞳に被さるまぶたは惑うように震えている。)……ありがとう、エマ。姉さんのことまで考えてくれて。エマはやさしいひとだよ。苦しみのまなかにいても、自分じゃないものにやさしさをむけてくれる。……やさしすぎるから、きっと生きづらいんだ。
(静かな感情のうつわが音もなく壊れ、エマニュエルの青白い顔にははっきりとした怒りが浮かんでいる。それは自分に対する怒りであったが、その他のものにも――やさしかった人々に対しても、ぶつけられているようでもあった。机の上にある拳が、ぎりぎりと握りしめられている。)フィロメル、……きみもあの夜、わたしをゆるしてくれた。救われて、います……本当です。けれど、……だれもわたしのせいだと言わない。償う機会を与えてくれない。……くるしいことです……それも……。……すべて、生者の身勝手ですが。
└エマさまの静かな激情にこれまでたったひとりで抱えてこられたものが感じられて、本当に…たとえそれがエマさまの望みでなくともPLとしてはもうひとりで苦しまないでとぎゅっと抱きしめてしまいたくなりました…。
……つまりきみは、生きていたかった。生きていくには――自分以外のなにかを恨むことが必要で……そうして命を繋ぎとめておきたかったのですか。うらみの気持ちを向ける矛先に、領主さまが都合が良かっただけで、ほんとうは領主さまを恨んでいないのですか?――きみを恨んでいる?
└ずっとひた隠しにしていたものを寸分の狂いもなく言い当てていただけてうわあああと転げ回りました。ここでエマさまがきちんと言葉にして伝えてくださらなかったらまた違ったエンディングを迎えたのではないかと感じてしまうくらい、サバトが自分の犯した罪を本当の意味で認められた瞬間だったと思います。
……エマはどう?僕のことが、すき?僕が??エマからもらう長い時間をないがしろにせずに、最後まで立派に生きるって。信じてはくれない?……“同じ想い”って、きっと、こういうことじゃないかな。(押し付けるのではなく、彼の気持ちを聞くために。淡いブルーは静かに答えを待っている。)
└全シーンが名シーンすぎて抜き出せないという状況に陥っているPLでございますが、特に注目して頂きたいのはこのシーンで……あまりにも大天使すぎて今も読み返しては泣いています……。
「たくましく育ってください。……きみなら大丈夫だと思いますが。」
└タイトル会話からの引用なのですが、エンディングを迎えたいま読み返すとふたりの未来が見えるようでとてもぐっときて、このたった一言でも泣いてしまいそうです。
わたしは神を思うように……きみを愛している。ですがそれ以上に――きみのことが……好きです。大好きですよ。きみに出会えたことは、わたしの幸いでした……。悪魔には……過ぎるほど。(潤んだ声がフィロメル、と呼ぶ。さよなきどりの名を呼んでも、意味するものはどちらでもいい。振り返るのが、この少年であってさえくれれば。)……聞かせてください。魔法使いとしてのいのちを分け与えることは……ほんとうに、きみのためになりますか?わたしが、苦しみを押し付けるのみになってはいませんか。……きみのために、生きてくれますか?
└エマさまがフィロメルの気持ちを受け入れてくださって、互いの同意を確かめるような問いかけも含めてふたりのこころが真の意味で繋がった場面だったと思っています。エマさまがサバトのこともフィロメルのことも大切にしてくださっているのが伝わってくる“振り返るのが、この少年であってさえくれれば。”の部分もとても好きです…ラストイベントはこの辺りからエマさまのレスが来るたびにひたすら泣いていました…。
「きみのいのちを、師を――わたしを、……信じます。」
└エマさまの人生を思うとこの一言だけでも胸がいっぱいになります…。
「……きみに、わたしは……節制を教えなくては、ならない。……時間は、あまり残されていないようです。……出来ますね、きみなら覚えられますね。」
└エマさまにとってはその身を引き裂かれるよりも辛い事態だったでしょうに、あらゆる葛藤や悲しみよりもまず先に紡がれたこの言葉にエマさまのやさしさや強さが凝縮されているようで、ああエマさま…本当になんて大きなお方なのだろうと…。
(すみません、ごめんなさい。ふとした瞬間に溢れそうになる謝罪を腹の底に沈める。涙を止めることはできなかったが、エマニュエルも笑ってみせた。くるしい泣き笑いだった。やっと恐れなくなったこの一歩が、いまは遠い。縮めることの出来ないものに、かつて少年を拒絶したことを思い出して。……これは業だと、エマニュエルは思った。
└悲しいけれどやさしくて、苦しいけれどやっぱりやさしくて、エマさまとはじめて出会った朝のことを思うと“縮めることの出来ないもの”というのがあまりにも切なくドラマチック過ぎて震えました。
一日でも――、……一分でも、一秒でもいいから。どうか長く、生きて。生きられるように、エマも、……死神に立ち向かってくれる?僕のちからがエマの体にさわるときは、ちゃんと教えてね。……遠ざけられたなんて、思いはしないから。(震えることなく口に出来たのは、そこまで。鼻筋と目元が熱い。雫はまぶたから零れ落ちることはないけれど。)……もう二度と、楽にしてあげたいなんて、言わないよ。エマにとってはどんなに生きづらい世界でも、僕はエマに生きていてほしい。……だいすきだよ、エマ。いのちがすり切れる、その瞬間まで。どうか、僕と一緒に、……しあわせに、生きて。
└フィロメルくんと生きるためにエマニュエルの命はあったんだねえ……(泣)生きてきてよかった……と思えたのは、すべてフィロメルくんのおかげです。ありがとうございました。
「フィロメル、……きみが魔法の節制を覚えたらね、わたしはきみを抱きしめたいな。……抱きしめさせてくださいね、おもいきり。腕に込められるだけの力で。だいすきですよ、フィロメル……土曜日のさよなきどり。あいしています……、……ねえ、ごめんなさいね。……あいしてます。」
└エマさまの言葉がやさしすぎて泣くしか出来ません…エマさまがおもいきり抱きしめてくださるそのときにどうかどうか間に合いますようにとふたりの未来を思うとあたたかくもありたまらなく切なくもあり、本当に贅沢な物語を紡がせていただくことが出来たなあとこころ震えるラストシーンでした。個人的に古い意味でのかなしい(切に心の動くさま、切ないくらい愛おしい)という言葉が大好きなのですが、ふたりの物語はまさにかなしいという表現がぴったりだなあと思います…。
(――はじまりは、雨のにおいのする夜のことだった。土曜日のあくまは孤独な魔法使いと出会い、いのちをついばむ小夜啼鳥へと姿を変える。開いた本のページはわずかしか残されていない。そこに友や領主の名前が再び刻まれるかは数奇な運命次第だけれど、しめくくりはきっとそう変わらないはず。丘の上の、ふたつの名を持つ魔法使い。健やかなるときも病めるときも彼は深海の師とともにあり、慈しみ、慰め――死がふたりを分かとうともなお、“いのちあるかぎりあいしていた”。)
└この最後の締めが大好きです。
やりつくした感と出尽くした感があり、裏、というほどの設定は無いのですけれども……エマニュエルはイベント全体を通して……というよりか、その人生の大半は、生に対する意志が希薄な男でした。魔力に目覚める前は至って明るい、幸福な青年でしたが、突然魔力が開花した後は飼い犬と村人Aを吸収するという大変ショッキングな体験をし、その後磔にされて殺されるかと思えば家族が自分を庇い先に死に……といった悲壮設定ってレベルじゃねえぞ、という出来事を経て、そうして自分だけが生き残り、とても優しい魔法使いに拾われて師事をしていくうちに心を開き、めでたしめでたし……というわけでもなく実は師匠の命を吸っていたよ!つまり師匠を殺したのは自分だよ!というこれまた最悪 な出来事が発覚。死を選ぼうとするものの、先人の想いを裏切ることになるため自死は出来ない……罪悪感で苦しいし何も感じないように心を閉ざして生きよう。というのが初期のエマニュエルです。(とても長い)
当人の考えとしては良い人間になりたいと願っているのですが、生来持ち合わせた能力がそうさせてくれないという状況に(PLが)追い込んでいました。本人の性格がどうであれ、他者に迷惑をかけることで命を繋ぎ続けてきた普通の人間には持ちえない能力を持つ者というのはまさしく“悪魔”なのではないかなあと思っています。
基本的に死にたがりなので、フィロメルくんの魔法をはじめて解こうとした段階(というと2ndでしょうか)からすでに死ぬことは男の頭の中にありました。最悪自分が死んでフィロメルくんの魔法が解ければそれでいい、というような……。けれどそうすることが出来なかったのはルネディの存在があったからで、フィロメルくんは彼女とふたりで隷属の魔法から解放されなければならないと思うようになります。この考えは3rdから4thにかけてで、最終的にはフィロメルくんのことを想うからこそ、隷属の魔法を解いてやりたいのはもちろんですが、ルネディ亡き今は、身勝手でひとりにしてはならないと思うようになりました。
領主さまと対面し、フィロメルからサバトへ移り変わったとき、エマニュエルも相当厳しい物言いをしていたのですが、このときのエマニュエルは「サバトに喋らせると余計なこと(帰りたいと望むこと)しか言わないだろうから、自分と領主さまの間だけで取引に持ち込もう」と思っていました。からの、お黙りなさいです。ルネディの死を知りませんし、――知った後も、生に対する執着があまりないので、あのような真似(自分に対する呪い)もたやすいことでした。サバトくんが死ななきゃ安い! というのは半ば冗談としても、エマニュエルが言い出したことはこれまでエマニュエルが送ってきた人生そのものでしかなく、不利な条件であるとはPLもPCも思っていませんので、容易く口にし、制約を かけることが出来ました。領主さまが望むものが自分と領主さまを結ぶ“隷属の魔法”だったらどうしようかなあ……と思っていたのですが、そんなこともなかったようで本当に助かりました……。
サバトについては本編で全て出し切った気がしているので目新しいお話も特には…なく…細か過ぎて伝わらない些細な部分しか語れず恐縮ですが、サンプルロールから全編を通して領主さまへの憎悪は全てそのままサバト自身に置き換えられるよう意識していました。エマさまにはえげつない過去をふわふわっと告白させていただきましたが、自分のせいで大怪我を負ったのに弟が無事でよかったと笑う姉を当時のサバトは理解出来ずに拒絶しています。加えて姉の最期が単なる“処分”ではなくいたぶられた末の、ということが臆病少年を狂気に駆り立てた一番の要因でした。とはいえどんなに自分を憎んでも当時は八歳の子どもです。父親の話を小耳に挟んだ領主さまに逃げ道を塞がれれば死への恐怖が勝るだろうなと考えた結果、悪魔崇拝の意味合いも併せ持つ本編のサバトの性格が固まったのでした。領主さまを殺すことで擬似的に自分を殺してやりたいという私情まみれの浅ましい小物といいますか…ちなみに奴隷なので凶器になるようなものは手にすることは出来ないかと思い、本編でもちょろっと漏らしたおどろおどろしい発想は武器を使わなくても自分の身体だけで何とか出来る方法だったりします。とにかくそんなサバトでしたのでいつか自分の目的のために魔法使いさまを手に掛けようとするのでは…ということを最も懸念していました。もちろんやさしいエマさまを憎むことはないと分かってはいましたが、4thイベントでエマさまにその身を賭して助けていただき辛い過去の一端を覗いたことで「僕が楽にしてあげる」とあらぬ方向に振り切れてしまい…正直、ラストイベントでも前半はちょっと危うい…怖い…やめて…と思う場面もありつつどう転ぶものかと冷や冷やしておりました。投げやりでも押し付けでもなく、純粋な意味でエマさまのいのちをいただくことを願えたのは、エマさまとたくさん心の会話をさせていただけたからだと思います。魔法使いになるとは全く思ってもみなかったので、長い目で見ればあまりにも悲し過ぎる結末かも知れないということも含めて、個人的にはとてもとてもいとおしいエンディングでした。妄想がはかどります。細かい癖に長くてすみませんのついでに口調と人格の補足というか弁明も少しばかり…後半は特にキャラ崩壊なみに口調がぶれぶれでとても恥ずかしかったのですが、PLとしては一応サバト(本来/領主さま用)、フィロメル、サバト+フィロメルの四つの違いを意識しておりました。フィロメルの口調がときどきとても女の子(ショタの「?かしら」口調が好きだという理由もありますが…)だったのは姉の影響です。そこから女の子らしさと跳ねる語尾をなくして漢字の変換を増やしたのが本来のサバトなので、4thからラストにかけて口調がぶれてしまったのは本来の自分とエマさまと過ごした自分の間で葛藤していたせいでした。最終的には穏やかでありつつ茶目っ気を忘れない形に落ち着いたかなと思っています。余談の余談ですがきゃぴきゃぴしたショタほど男らしく成長する法則が好きなので、そのうちまた一皮むけて、エマさまに頼ってもらえるような青年に(それまで見守ってはいただけないとは思うのですが…涙…)なれたらうれしいです。
Mathis & Chainon
何時の間にか傍らにまでやって来た寝起きの少年を見遣れば微笑を湛えつつ「寝癖、跳ねてる。」との指摘を跳ねた髪へと指を突き付け、ピシッと。
└日常のありふれた光景がとても眩いです。こそばゆくて。
…それよりさ、これ飲み終わったら買い物行こ。はちみつがまた切れそーでさ。(今朝から何時も以上に商店が騒がしいのも気になるし、件の雑貨屋に重要な用事もあるが故に。)
└度肝を抜かれたと云うのは正にこのことかなあ、と…ラスイベでは何かあるだろうなあ、と思っておりましたが、まさか雑貨店が絡んでくるとは露にも思っておりませんでした。思えばセカンドイベントから絡んでいるので伏線だったのやも知れないですね…。
……失明しちゃう、かも。でも、――もしね。僕が…、死なないといけないなら。おめめえぐっちゃった方がいいのかな、…それなら、アンジェの子ってわからないし…、しぬよりはいいと思うの。(銀の眼はアンジェの血を引く証。魔法を試し光を失うのなら、――そも命の危険すら孕んでいる未来ならば、この眼は潰してしまった方が良いのやも知れない。瞳の色が解からなければ血の繋がりの証明にはなるまいと。幼い口調ながらも其処に悲しみの色も怯えの色もなかった。魔法使いと生きる未来が、共に在る可能性が潰える方が怖くて仕方ないのだから。)
└眼を、抉る……!!?思わぬ一言にこっちの眼が飛び出るところでした。眼を抉るなんてそんなの、そんなのさせら れるわけが…!
「……バーカ、なに死ぬこと前提に考えてんだよ。おまえの傍には俺が……、…エーヌだって居るだろ?」
└不穏な気配はスレ立ての時から感じておりましたが、俺が傍に居ないって云い切らない辺りにすごく警戒を憶えました…。こわかったです……。
(「…シェノン、」と名を呼んだのは銀が不安げに魔法使いの淡紅を仰いでいたから。吐息を吐くように音を零したのと同時、少年の視界を覆うように其の頭へと薄手の黒い布を落ちるだろう。此れで少しは其の目立つ容姿も隠せるだろうと――、応急的な守りのまじないを掛けるのも忘れずに。)
└こういう優しさを見せてくださるのがずるいです。
(そうして人に声を掛けられる度、魔法使いは人懐っこい笑顔を見せながら雑貨屋までの街道を歩む。其の歩調はまるで一歩一歩を記憶に刻むように、ゆっくりと。)
…――おかあさん?(おかあさん。酷く馴染みのない言葉。兄と思しき彼らに兄弟やも知れないと家族の可能性を示された時でも、信じるには至らなかった。肉親のあたたかさは何処か他人事めいて響く。)
└奴隷という身の上、母親を知らない子が居ても不思議ではないのですが他人事を紡ぐような口振りが切なくて…悲しいです。
………、ああ。おまえはなんにも、心配する必要はねえよ。(ずっと一緒と紡がれた言葉には否定も肯定も見せず、ただ、不自然でない程度に言葉を濁して頷いた。そう、何も心配する必要は無い。此れからも此の先も、例え囚われた籠の中でも少年が笑顔で居られる未来は直ぐ其処に視えている。秘めた此の選択に後悔がないことは、真直ぐな信愛を向けてくれる少年に対して穏やかに笑い掛けられることが何よりの証明だった。)
└覚悟が美しく苦しいです……。
(突如肌に降り伝わった柔らかな感触に、驚いた――或いは怯えたように、繋ぐ手がピクリと微かに震えてしまった。僅かに波立ったこころは、けれど悟らせる間もなく押し留め、少年が顔を上げ淡紅を窺った所で些細な変化も見られまい。)
(ずっと欲し、永久に満たされることもないと思っていたものが容易く与えられるというのはなんてしあわせで、そしてなんて、恐ろしいのだろう。漆黒で塗り潰された世界に突如現れた光はこころの深層部に深く根付き、其の慕情を向けられる度にこころが震え、決意も簡単に揺らぎそうになる。)
└臆病なお兄さん…可愛いです……。
(――まずい。そう思った所で後の祭りということはわかっているけれど、甘い囀りと優しく降り注ぐ柔らかな唇から逃れられるわけもなく。困惑宿し瞠られた淡紅はまるで込み上げて来る何かを堪えているかの如く徐々に苦しげに、寂しげに、哀しげに、眉根を寄せて顰められて。)
「――あの、ね。もし、なにかあったら。……いのちの危険があったら。僕を、…ころして? ――マティスお兄さんは、…生きて、ね。おねがい。」
└不穏に不穏が重なる空気にこれからどうなってしまうんだ…!?とハラハラしたのはさることながらシェノンくんの言葉に並々ならぬ衝撃を受けました。お願いですからそんなこといわないで生きてー!
(魔法使いは嘘を吐いた。数百年と生きて来た中できっと一番美しく、一番上手に出来た極上の笑顔を楯にして。――こころを悟られてはならなかった、其の瞬間に少年を淡紅の束縛から解き放つ計画が水の泡と為ってしまうから。今此の刻でなくてはならない、少年の中で淡紅の記憶が未だ浅い内に。魔法使いのこころに燈る銀色の耀が未だ小さな内に。手放せる内に。幼い唇に目一杯乗せられた思慕を額と頬に受けながら、其の微笑みの裏で魔法使いが思い描いていた未来は恐らく少年とは真逆のものであっただろう。今一度の願いを聞き届けたなら此の歩みはあとは甘い日々の崩壊、否、転成へと真直ぐに突き進んで行く。)
└とても切なくって…
……、…――わかった。じゃあ、約束。“ずっと一緒”だ、……ずっと、おまえだけを視てる。(美しい銀の湛えた滴を指先で拭い、真直ぐに淡紅を注ぐ魔法使いの顔ばせはとびきりの極上の笑顔で彩られた。其の笑顔の裏に潜ませたものがあることも悟らせず、透き通る水色の糸へと手を差し入れて、まるで幼子をあやすように撫で付ける。「…大丈夫。」もう一度念を押すように、言い聞かせるように声を潜めて。)
(美しい銀の双眸を閉じ込め覆うように彼の瞼へと伸びた。柔らかな熱で其の視界を遮るように、)…バカ。そんなお願いしてんじゃねえよ、……大丈夫だっていってんだろ。それに、なにかあっても俺が――……。(まもる。守れる筈だ。闇に堕ちた身の上はとうに世界から愛を断たれ恐れるものは何も無くなったというのに、此の上何が出来ぬというのだろう。今更どんな罪も咎も怖くはない。けれどたったひとつ恐れがあるとするなら其れは目の前の少年の命が散ることくらいで――、――…)
(だって本番は此れから、――今一度意識を集中し直す。此れから掛ける魔法は禁じられた闇の魔法――記憶を書き換える、魔法だ。)
泣きました…、悲しくて苦しくてどうにか抗えないものかとそればかり考えるようになりました…。
「…ヤなこった。」
「……――本当に俺の為を思うんなら、足掻いてでも生きてみせろよ…。(天より冷たい滴が降り注いでいたあの雨の日、俺に手を伸ばしたように。 領主の許を逃れ、延命した命を如何扱おうと少年の自由であるし、魔法使いも元より其れに関して口を挟むつもりはない。けれど、しにたいところしては違うのだと。終始一切の感情を乗せずに紡いだ言葉の響きは少年の耳に冷たく届いただろう。失われそうだった命を寸での所でやっと掬い上げられたというのに、それすら踏み躙って魔法使いの為だと死を選ぶ少年の姿勢はまるで此方の想いが通じていないようでもあって、最後の最後は行き場の無い理不尽な感情が溢れて思わず声が震えてしまったけれど。)
└ある種の光にも思えた言葉が御座いまして、…幾つも考える策の切っ掛けになったかなあ、と。マティシェノは想い合うがために噛みあわず、その最たる例を作ったのは此方やもしれないです。
「んー、…一夜限りのおともだちならいっぱい。」
領民にもあいされていらっしゃるのですから、ちゃんとしたお友だちのひとりやふたりやさんにんを作ってください……。
(信じている?は、と魔法使いの口唇より浅い嘲笑が零れたのは少年の取った行動が余りにも素直であったから。肩を振り切る其の行動は紛れもなく拒絶であり、同時に魔法使いを信用していないことに繋がる。幾ら涙を浮かべていようと其のこころはきっと疑心でいっぱいで、そういえば以前少年に領主に仕える己の仕事を打ち明けていたことを思い出す。人を欺くことを仕事とするスパイの言うことは信じられないと、少年も遂に思うようになったというわけだ。其れが正しい判断ではあるけれど――)
美しいです…、そして可愛いです。
(少年の首筋に添えられた刃物を淡紅に捉えるなり、其処から一筋流れた緋を見遣るなり脅迫染みた其れに不機嫌に眉は顰められる。双眸に宿るのは哀しみでも咎めるようなものでもなく、道端に倒れ伏した見知らぬ邪魔な汚い奴隷を見るかのように、酷く冷やかだった。)
└背筋がぞくぞくしました。…きゅう、と心臓を掴まれる心地はまさにこちらかと。
(小さな躯に寄り添っていた黒き使い魔は主の命を実行するべく突如其の白い首筋に牙を立てるだろう。牙が少年の肌に食い込めば全身が麻痺し痺れるような感覚が幼い躯を廻るだろうが、)
└今迄沈黙を保ってきたエーヌくんが突如牙を剥いたためエーヌくん!? と心底吃驚しておりました…、巻き付かれたりしたら身動きとれないな、とは考えておりましたが……神経性の毒をお持ちだったのですね。
――…ねえ、俺のこと………好き?(顎を掴んでいた手を今度は頬へと滑らせて、あたたかな掌は優しく愛撫するように少年の頬を撫ぜるだろう。ゆるりと首を傾げる顔ばせには蠱惑的に笑んでみせた。拾われた記憶が消えて尚、其の盲目的な愛慕は魔法使いへ向くのかどうか試すように。)
└好きです、だいすきです、と泣きじゃくりました……好きなだけなんです…。
「すき、だよ。だぁいすき。…あいして、いるよ、――マティスお兄さん。」
└シェノンくんがマティスに依存し愛してくれるのはただ単に拾ってくれたからとかではなく、もっと別の理由があるんだなと感じられて涙が…。
…僕ね。お兄さんといっしょに、…生きたいだけ、なの、――…っなんで、だめ、なの。なにがいけないの……? 僕がどれいだから? 僕が…にんげん、だから? ……ねえお兄さん、僕は、お兄さんといっしょに生きちゃ…だめ? マティスお兄さんのね、シェノンで――幸せをつなぐもので、ずぅっと…ありたいよ。あいして、なぐさ…めて、ぎゅうっとして。僕、すぐおおきくなる、から。だから…っ、――やめて。おねがい、……せっかく、お兄さんにふれられて、あいしているっていえる、のに。独りにならないで、…僕もいっしょにいさせて。(隷属の印を持つ奴隷だから、寿命の有る人間だから、抑々この身なのか。明確に伝えられなくても、既に思い出せぬ邂逅の記憶が魔法使いの為そうとす る魔法を容易に描かせる。“ずっと一緒”が叶わない理由を問うて、水色が微かに揺れた。澄んだ銀色は闇に塗れてしまったけれど、彼に募る愛慕は、漆黒に燈される光は変わりあるまい。彼のみを慕い感情を綻ばせていた幼子は無垢な、――在りし日と変わらぬ幸福に花咲み、“魔法使いに手の伸ばした”。それはあの雨の日、奴隷の少年を拾う切欠となった瞬間を彷彿とさせるだろう。痺れの所為で指先は震えてしまうけれど、彼の顔ばせに触れる指先に惑いはない。小さなてが頬を包み込み、いとしげに撫ぜ、其の感触を心に刻み込む。“シェノン”の“生きる為の足掻き”は斯うして、漸くひとところに落ち着くか。揺れ惑った自我も溶け合い、ひとつの形を見つけた。結局帰結となるのは魔法使いを想い、 あいする、無垢なこころ。精一杯に彼への愛を囀り、触れることでこの身に宿る、未だ消えぬ思慕を伝えよう。魔法使いに触れていた指先が頬から形の良いくちびるをなぞり、些末な寂寥が漆黒に溶けた。麻痺に依り己の身を支えるだけでも必死な矮躯では、最も愛を伝える行為すら、こんなにも遠いなんて。)
└この台詞で何度一緒に居るという選択肢に揺らぎかけたか…!どんなに突き放しても手を伸ばしてくれるのは本当に本当に嬉しかったのですが、シェノンくんの口から慰めてと出る度に申し訳なさで胸が締め付けられるばかりです…あああ…そんなことを言わせたいわけじゃかったんだよ…。
「違う。……違う、おまえの所為じゃない。俺の――…俺は、………だから、おまえとは……そーいう関係にはなりたくねえんだよ。 おまえだけは、そういう目で見たくない。 大切 、だから。だから………いっしょは、ダメなんだって。」
(夜を抱く闇の魔法使いの生き方に、此の何も知らぬ太陽のようにあたたかい優しくも純粋な少年を。穢したく、ない。)
………俺のしあわせは、おまえが此の蒼穹の下で笑って生きててくれること 、なんだから。(少年が笑い、楽しく、時には泣くこともあるかもしれないけれど、しあわせに生きられればいい。他に望むものはなにもない。少年のしあわせこそ、魔法使いのしあわせなのだから。其れは魔法使いの嘘偽りのない、こころからの言葉。)
(絶え間なく流れる涙を止めるように、慰めるように、濡れた漆黒の端に浮かぶ水晶を拭った親指は愛おしいものへと触れるように甘く、優しく。)…一緒には居られねえけど、ずっと視てることは…出来るから。……おまえだけを視てる。見守ってる。おまえが此の鳥籠の中で死を迎えるまでずっと――、…永久に。
…だから、……ねえ。おねがい、シェノン。(俺の言うこと、聞いて。 頬へ添えていた手はそのまま輪郭に沿って少年の耳許へと滑り、細い水色をひと房掬っては其の小さな耳へと掛けよう。ゆっくりと、愛おしさを伝えるように、剥き出しになった耳許へ唇を寄せては今一度の囁きが、願いが、命が甘やかに其処へ落ちるだろう。)
└耳許に囁き込むのは反則でしょうと……泣く泣く陥落せずにはおれなかったです……。
シェノンは、マティスお兄さんがすき。…それは、きっと。記憶を消しても、のこっちゃうと思うけれど。……思い出せない記憶ができたいまでも、ね。僕はお兄さんがすきだもん。だから。また、すきになるよ。
└シェノンくんならたとえ忘れてしまってもまたきっとこんな風にマティスさんのことを愛すのだろうなあと思っていたからこそここでの台詞にはうれしくもなったのですが、生きてるのに忘れてしまうなんてそれもまたとんでもなく切ないお別れだなあと同時に胸がつまりました。シェノンくんのマティスさんへの想いは本当に最後まで揺らぐことがなくて、それはきっとシェノンくんがシェノンくんである限り変わらない真実なのだと思わされます。
(学びたい、働きたい、もう怖くない、眩い光の中を歩いて行ける強い意志の宿った言葉を聞いた魔法使いは微かに俯き、喜びと哀愁に揺れる淡紅を静かに伏せて。)…………なら尚更、俺から離れないとな。
└ここで寂しそうになさるのはほんとうずるいです……。
(――耳へと払った其の髪より髪色の変化は始まり、やがて其れは直ぐに全体へと広がって行くだろう。徐々に淡い水色が薄れ色彩が抜け落ちれば髪は自然と銀色へ。或いは、灰色か、白か。どちらにせよ眩くも薄い色相へと変わる筈。抱き寄せるように背に回した腕は少年の痣へとなぞるように触れ、ゆっくりと治癒を施そう。)
└眼の色が闇を宿す漆黒になるのならば、髪は眸の名残りもあって銀髪がよいなあ…と思っておりましたので、このロールを拝見して眼を瞠りました。そして嬉しかったです…、痣に触れる仕草もとても自然でお美しく。
「っ、……ふつう唇にしねえだろ…………――バカ、」
└バカですもの…、この場面にて唇以外にキスするなんて浮かびませんでした。狂おしい程のいとしさに焦がれ、それを伝えるなら“くちびる”以外なかったのです。
…疲れたろ。おまえが眠るまではずっとこうして傍に居てやるからさ、……眠っていいぜ。(おまえが眠るまで――其れは魔法使いの選択が、言葉になった瞬間だった。次に少年が目覚めた時は淡紅のみが少年の記憶から抜け落ちて、魔法使いの姿も其処には無い。淡紅の消えた少年の世界を新たに彩るは、変わらず傍に在る黒き友と――新たな拾い主である雑貨屋の店主の青年だ。起きていようと抗おうにも少年の躯に廻った痺れは四肢から力を抜き取り、途方のない眠気を誘うだろう。そう、と色の変わった前髪を撫でるように梳いては、魔法使いの手は少年の額へと。師より教わった魔法を思い出しながらゆっくり、じっくりと魔力を注ぎ、少年の記憶より淡紅のみを弾き出して行こう。たった数日の内の記憶で、少年の同意を得ているとはいえこころに深く根付いた其れを――上手く取り出せるであろうと信じて。)
└愈々か…と固唾をのみながら、涙は一向に止まりませんでした。
(闇に沈んだ銀が還るように、しなやかな指先から染む魔力が少年の髪を銀糸へと色相を移ろわせた。宛ら光を宿す銀の髪と、闇を孕んだ漆黒の眸。相容れぬ色を宿した少年の背より閉ざされた翼は消え去れば、残るのはうなじに嵌められた隷属の枷。此の鎖は生涯解けることはなけれども、鎖の先の主の眼はもうこの少年を認知せぬ――後はこの身が銀の一族に見つからなければ、屹度。鳥籠の中の自由は約されよう。己の御髪が如何なる色に変化したかも認知する隙を与えられず、審判の刻は遣って来た。涙を伴う受容の音に齎されたのは安堵の溶けた優しき微笑。嗚呼それは、魔法使いが解を紡がずとも選ばれた答えを知るに相応しく、最後の口付けを――最後にする心算はなけれど――、敢えて彼のくち びるへ。初めて触れ合う、やわく、甘い熱。身を焦がす熱の与え方を知らぬ接吻は花弁が触れるように、淡いものなれども、重ねられた時は瞬き幾つかの短くも長き時。永久に在ればよいのにと、こころに愛執の炎が揺らめいた。動揺に瞠られた淡紅を映した漆黒は愉悦気味に眇められ、――離されたくちびるが囀るのは甘い、あまい、あい。)
└シェノンくんの愛が、想いが全てこの口付けに籠められているようで……目頭が熱くなりました。こんなにも愛されているんだな、と。好きです…。
んーん、つかれてない。……ねたくない、もん…――お兄さん、マティスお兄さん…っ、すき、だいすき……だいすき、だよ、……あいし…て、(四肢は重く、目蓋も堕ちようとしている。額に触れるあたたかな手が心地よくて、体躯を廻る眠気を助長させ。それでも厭だと――意識を明け渡して仕舞えばこのいとしく、大切な記憶が消えてしまうと知っているからこそ、少年は否を紡いだ。漆黒から涙を零し、重い瞬きに応じて水晶が彼の肩を濡らす。幾つも、幾つも。言葉にされぬ否を重ねるように、離れたくないと叫ぶ心の聲の代わりのように。)
└眠りに落ちる間際も愛を囁いてくれるシェノンくんが切なくて愛しくて……ああ離したくないな、なんて思ってしまいました。
(九つの音を、くちびるだけがなぞる。聲にするべき音が見つからない。紡ごうとした名前も解らない。けれど、確かに。このこころが求めるひとは此の音を持っていた筈。幾度もなぞり、刻み付ける。何時消えてしまうやも知れぬ日常の欠片を幾重にも、こころとからだへ。もう失いたくはない。微かにでも遺るいとしき気配を掻き抱くように、少年は必死だ。たすけて、“ ”と彼への懇願が――あえかな願いが零れ。届く筈の無い希いは滴と共に消え果て、少年の心身を苛むか。淡紅の抜け落ちた世界はこんなにも寂しくて、切なくて。途方もない哀しみに満ち満ちている。そう、と少年に寄り添う闇は決してしあわせなんて名を与えられるものではあるまいて、)
└ああああ ああああああ!!シェノンくんごめんねえええええええええええ!!!
「……それは無理。これが俺の、生き方だから。」
└悲しすぎました…。
(其れは心臓に幾重にも鎖が絡み付き、縛り上げられたような。幼く拙いながらも砂糖と蜂蜜をたっぷりと溶かした甘い甘いホットミルクより甘美であった口付けは今まで魔法使いが唇を重ねて来た中でも一等熱くて、しあわせで、籠められた深い深い愛情は、まじないは、確かに根深く魔法使いのこころに。忘れない。忘れるわけがない。忘れられる筈が――ぎゅうっとこころを絞め上げ押し潰すかのような切なくも甘い疼きを齎す此の感情が親愛なのか、友愛的な恋愛の形であるのか、或いは其のどちらでもあるのかもしれないけれど、こころに燈った此の想いはきっと言葉では表現出来ぬものなのだろう。耳元で囁かれる愛には抱擁で応え、二度と聞けぬかもしれぬソプラノを、寒き日々をあたためてくれたぬくもりを記憶と躯に刻み込むように、肩に沁みる哀しみすら愛おしいと少年を抱きとめる腕の力を微かに強めた。)
「―――――おやすみ、シェノン。 、」
(たった五文字、されど其れは闇の魔法使いには決して紡がれることの赦されない言葉だった。まるで呪いでも掛けられているように其の言葉だけが聲になることも吐息となることもなく、口唇だけが取り残されたように動くだけ。けれども魔法使いは此の時初めて愛情というものがなんなのかを、真に理解出来た気がした。)
(今すぐにでも倒れてしまいそうな躯を叱咤し壁より其の身を離したなら、淡紅は青年に運ばれてベッドに横たえられた少年を一度だけ振り返り、いとおしい姿を視界へと焼き付けた。其の少年の傍に寄り添う使い魔が、何かを訴えるように淡紅をじっと見据えて――本当に此れでいいのかと、脳裏に訴えかける言葉に力なく笑って応えては今度こそ部屋を、雑貨店を後にした。)
(雪崩れ込むように部屋の扉を開け放ち、そのまま温度の無い殺風景な部屋の冷たい床へと倒れ伏す。おかえりなさい、と何時も真っ先に駆け寄って魔法使いを迎えてくれる銀色は、冷えた躯に寄り添い熱を別け与えてくれた水色は、もう居ない。嗚呼――そうか、そうだった。忘れていた。少年が来てからあたたかな部屋がすっかり当たり前のように定着していたけれど、ひとりの空間とはこんなにも寒いものだった。露出した箇所はまるで氷に触れているかの如く冷たく、凍えるような冷たさが全身を駆け上がる。せめて少しはマシなベッドへ移動出来たら良かったのだが躯は全身に鎖と鉛が付けられたかのように重く気だるさを伴い、寝返りをうつことさえままならぬ。けれど、)………俺はもう、十分だ…。(十分過ぎるほどのしあわせを貰った。愛を貰った。腕に、躯に、こころにはしかと少年の想い出とぬくもりが刻まれて、此の胸中はかつてないほどにあたたかな想い出に満たされている。褪せることのない此の想いが在る限りこころまで寒さに蝕まれることはきっともうないだろう。)
(そうして翌朝からはまた少年が来る以前のいつも通りが始まるだけ。ただ冷えた躯をあたためるべく小鍋に用意したホットミルクを作り過ぎて余してしまったり、仕事という名目の下己が欲求を満たす為に知らぬ男と躯を重ね唇の熱を分け合う都度幼き少年が瞼の裏に浮かんだり、其の少年の成長と無事を確かめる為に日々使い魔の報告を受け遠目から見守ることが新たにいつも通りの日常に加えられて。――やがて夜を運ぶ闇の魔法使いの噂は城下町を発端に領地へと広がるだろう。後世に戒めとして語り継がれる其の噂は、草木も眠る夜更けに街中を歩いている悪い子は、闇を纏った悪魔に魅了されて何処へと連れ去られてしまうというありふれたおはなし。けれど此の噂のお陰で夜中に外出する領民は減ったとか。真偽の程は定かとはされていないけれど、確かに闇に育てられ、闇と共に生き、闇に染まった夜の魔法使いが居た。夜の暗闇に橙色と淡紅を燈し、今宵も領主に与えられた仕事をこなすべく夜道を歩く。其の忠誠が領主に注がれる日は永遠に来ないけれど、其れでも此の地にいとおしい命が存在する限り魔法使いは其処に在り続けよう。)……――あいしてる。(願うはただひとつ、おまえのしあわせ。)
└ラストイベントのマティスさんのことはなにをなさるの!どうなさるの!とそわそわ見守っていたのですが、こう…個人的にマティスさんは一番辛いだろう選択をあえて望む気質があるというか、茨の道に上半身裸で突っ込んでいかれるような危うさをお持ちのような気がしてならず、生涯闇に生きたというマティスさんのここでのエンディングは本当に切なかったです。シェノンくんの幸せだけを灯火にして生きるお姿がとても好きですが、それでもあなたも幸せになってと願うだけなら許されるでしょうか…。
「そんなのやだっ! ――…待ってて。また僕が“あいする”から。」
└記憶を消されて、でもそれでも、希望を失っていない前向きなシェノンくんの台詞に目頭があつく…。
――…シェノン。(咽喉は大人しくひとつの音を奏でた。シェノン。しあわせの名前。幸せを願って付けてもらった、鎖の名前。ひらりと、ひとひら。淡紅の花弁がこころに舞った。すべてを失ったと思っていたけれど、ひとひらだけ憶えている記憶を見つけて、漆黒は壊れそうなほどに揺らめき、大粒の涙が又頬を濡らす。一度伏した目蓋の裏に確かに誰かの――、シェノンの名前を与えてくれた男性の面影が浮かび上がった。くしゃりと髪を撫で上げたしなやかな指先、こころに弾けた喜色と幸福。嗚呼、憶えている。明瞭に描けずとも、こころに息衝いている記憶が在る。それが何よりもいとおしく、そして、此の色褪せた――偽りの世界に瑣末でも色を灯してくれるから。あの子とこの青年は云った。屹 度その人が己に名前を与えてくれた“大切なひと”だ。虚ろな闇に支配された心に希望の光が灯る。どれほど小さな光でも、願い続ければ、足掻き続ければ。屹度何時かは望む光を見つけられる――そんな気が、するから。今日から“家族”になる男の手に幼き手が重ねられて、緊張を帯びた笑みがくちびるの端に浮かべられた。魔法使いへの所有の慾を切っ掛けにして現実を受容したこころは、蘇った記憶を頼りにして偽りの世界を映すことを許容する。漆黒に浮かぶ涙を空き手で払い、真直ぐと青年の顔ばせを仰いだ。絶望から始まったこの世界は屹度、思ったよりも優しく、美しい筈。)僕は、シェノン。こちらの子はエーヌ。僕のたいせつなおともだち、です。…あなたの名前を、教えてください。おにいさ …――、お兄さま、…僕はどうしたら、あなたの家族になれますか? なにをすれば、よいですか。……奴隷だった僕にふつうの生活を、教えて、ください。
└己で招いた結果とはいえ、人間の限りある生をシェノンくんがマティスではない別の人物のところでこれから歩んで行くのだと思うと勝手ながら物凄く寂しくて、切ない気持でいっぱいになってしまって、どんなに頑張ってもやっぱり手放す以外の道は選べそうになかったのですけれどそれでもすごく厭だなと。寂しいな、と思ってしまって……。
(さあ、いとしい色が欠けた切ない世界にて、一日の始まりを。蜂蜜も砂糖も控えめな甘過ぎないホットミルクから、新たな家族との記憶は刻まれた。そうして――、光を紡いだような銀を靡かせる少年は、シェノンの名を授けてくれた唯一無二のひとを探し、求むる日々を紡ぎ始める。黒き友を軸にして繋がる縁は、未だ絶えぬ細き糸――希望の光になることを信じて。静かな丘の友を訪ね、黒き猫が繋いだ縁を手繰り、其処から広がる魔法使いと奴隷の数奇な運命を追いかけて。領地に轟く魔法使いの名を、その色を、探し続けよう。いとしいひとに寄り添えるのが、彼に幸せを繋ぐのが、銀の少年が希う“しあわせ”だから。生まれ落ちたばかりのころ、二親に愛されていた微かな刻。愛を燈し呼ばれた、 現今は亡き者として“怒りの貴族”の系譜に記される名は、光の意を把持せし。亡くした記憶が闇に屠られ、闇を浚わねば夜の悪魔には辿り着けぬとしても、――光は闇を照らすために、暗闇に燈るものだ。魔法使いがあいしてくれた銀色は、記憶を失っても彼の生を照らすことを、共に在りしあわせを捧ぐことを生の意味となす。眸は闇を孕もうとも、純然たる意志は光として闇の魔法使いを見つけ出せると願い、手を伸ばし続ける。――銀の少年のしあわせは淡紅の傍ら以外、在りはしない。暖かな家で家族のぬくもりを得ても、学び舎で数多の知識を友との友愛を知っても、好きと囀る可憐な恋情を与えられても猶、少年は欠けた淡紅へのあいを募らせ、終ぞ出逢う日は訪れようか。淡紅と漆黒が溶け合う砌、 光の潰えた闇色はあまいあいを、蕩けさせる。在りし日のしあわせの花が咲くのも、闇の魔法使い以外に在りはせず――孤悲の中、光を願われた小鳥は闇色の蛇の許へしあわせを繋ぐため羽搏こう。愛の囀りは夜のために。しあわせの名は淡紅の魔法使いのために在るのだから。“あいしているよ”、“マティスお兄さん”、再び淡紅へとあいを、恋を捧ぐ日よ、どうか。記憶を亡くしたとて銀の少年のしあわせは、ただひとつ。)
└マティシェノの物語はシェノンくんが淡紅の記憶を失って、それでお終いだと思ってました。淡紅の記憶が完全に消えていなかったとしても、マティスが望んでいたようにシェノンくんは光りある生を行き、別のしあわせな人生を歩んでいくのだと。けれどそれで も諦めずに追い求めてくれるシェノンくんの姿に涙が止まりませんでした。シェノンくんは本当にマティスにとってしあわせを繋ぐ者です……大好き、愛してます…。
先ず本編中のロール描写におきましてマティスの心情が非常に読み取り難かったと思うのですが、それは仕様でした。…なんて大層なことが言える程語彙力もないのですが…笑。素直に己の感情を打ち明けるような性格ではなく、どちらかというと感情の読み取り辛いPCでしたのでロール内でああだこうだと細かく感情の描写をしたら面白くないかなーという考えのもと、心情ロールを控えておりました。その結果マティスの心情が如何だったのかまったくわからなくなり、ペアのシェノンくんPL様始め御迷惑お掛けいたしました。物語を振り返りつつ当時のマティスの心情を語りますと、Firstの時点ではシェノンくんのことは目に入っておりませんでした。何処で何をしようと口出 ししないほどには無関心で、ただただ領主様の奴隷であれば少し面倒だなという認識だけ。それでも領主様に報告しなかったのはそんな義理もないし、実際に捜していると言われなかった為です。正直関わるのすら面倒だと思っておりました。けれどLETTERでの遣り取りを通し、Secondに入った頃には無視出来ない存在に。しあわせそうに笑う顔も、甘えついてくれる存在が傍に居ることも、少し、少しだけ、悪くないと思い始めた頃です。またしてもLETTERの遣り取りを通り、Thirdイベント。この頃には自分の中でシェノンくんの存在が大きくなりつつあることに僅かながら気が付きます。けれど認めたくなくて、突き放そうとしたものの、シェノンくんの言葉によりその存在の大きさを自覚させられてしまいました。こ ころに踏み込まれたくなかったのはシェノンくんと何れ離れ離れになるとわかっていたからこそ、入れ込めば入れ込むだけ別れが辛くなると思ったからです。まあその努力も今にして思えば無駄だったわけですが…笑。Forthではシェノンくんへの想いを自覚したからこそ今までのように無関心ではいられず、如何したら領主様の手よりシェノンくんの命を守れるかを考えておりました。それで褒美の話を使おうと思い至ったのです。褒美の話につきましてはまた別のところで語られると思いますので此処では伏せさせて頂きますが、領主様が如何いう状況なのかということは彼に仕える身の上で知っておりましたので、その怒りがシェノンくんに向けば奴隷の命など簡単に摘み取られてしまうと思ったからこそ、彼の 機嫌を損ねてしまわぬようにと奴隷たちの居場所を吐きました。そして彼が家にシェノンくんを取り戻しにやってきたらその時に褒美の話を持ち出し、命だけは助けてくれと懇願するつもりだったのですが…予想外のシェノンくんの抵抗があり、嫌われて別れ易くさせるつもりが諭されてしまい、彼をこんなにしてしまったのは己だという罪悪感も重なって領主様に欲しいとの懇願を。けれど今までのシェノンくんではなくなった姿を見て、ああ今なら未だ己という呪縛から彼を解放してやれると思い、領主より自由になった今己からも自由にしてやりたいという想いでずっと後半は言葉を紡いでおりました。結果悪い方へと転がって行き、シェノンくんが縛られればそれだけマティスも罪悪感が膨れて行き己から自 由にしてやりたいと。そしてその気持ちを引きずったまま、Lastへ。行動にも表れたように、第一に優先したのは淡紅の呪縛からシェノンくんを解放することでした。その為にシェノンくんの中から己だけを消す、というのは最初からすると決めていて、問題は記憶を消した彼の預け先。候補はふたつほど考えておりまして、ひとつは今回シェノンくんとマティスが辿った雑貨屋に預けること。そしてもうひとつは、シェノンくんを母親の元に帰すことでした。その際は淡紅の記憶を全て母親と過ごしたものへと書き換えようと思っており、ルート的には此方の方がシェノンくんの一族にも触れられて良かったのかな…と今更ながら。危害を加えられる危険があれば正室派を魅了するなりして彼らの記憶もシェノンくん が一族に戻れるように書き換えてしまおう、という魂胆で、シェノンくんは淡紅の記憶は綺麗さっぱり消えて家族とのしあわせな時間を過ごし、マティスは魔法の多用で力尽き最後は師を殺めた廃屋で彼の使い魔の大蛇に見取られる、此方のルートではそんな結末を想像しておりました。雑貨屋ルートを選んだのはシェノンくんが髪と双眸の虹彩を変えたい、といってくださったからで、その場合は融通の利きそうな雑貨屋ルートの方がいいかと思ったからです。大切だからこそ傷つけたくない、穢したくない。だから一緒に居てはいけない。こころは愛を捧げてくれる銀色と共に居たいと叫びつつ、彼の将来のしあわせを優先し、離れる道を選んだのでした。
シェノンが生き残る方法と、マティスさんに棄てられないこと、此方がしたかったことになりますね。前者は冒険や探索にて掴んだアンジェ家の情報から色彩変化と痣の治癒をお願いし、事なきを得られたかなあ、と思っております。銀の眼がネックでしたので、当初は潰してしまうことも考えておりました。ゆえにポケットの小刀でした。これはmini1stの影響もありましたが…。後者のマティスさんに棄てられないことは、スレ立ての頃より何かあるのは解っておりましたし、この流れで雑貨屋に赴く不自然さに違和感が留まらず。指先に口付けたり、ずっと一緒の約束をしたのも、どうにかこころを揺らすことが出来ないかと“シェノン”の必死な足掻きも。記憶を書き変えられることに気が付いてからは、――それだけはシェノンが最も忌避したい、厭う行為でしたので全力で抗おうと。小刀を首に添えたのも“一緒に生きられないなら、お兄さんをあいしたまま死んだ方がしあわせ”とのシェノンなりの…あと、死ぬなら自分でと仰られていたので有言実行しようとしただけだったのですが……。シェノンが何かあったら僕をころしてね、とお願いしていたのは、彼の死生観ゆえもありますがアンジェ家の正妻を懸念して、のことでした。もしエーヌに噛まれていなかったり、奥の部屋に場所と移っていなかったら、魔法の気配に気づいた時に外に飛び出して広場にゆかせようかなあ、とも考えておりましたね。お兄さんと共に在れないなら死んだ方がよいので、あわよくば共に処刑していただけないかなあ…などと。エーヌくんの毒を注がれてからは為す術なし、でしたので、言葉と愛撫でどうにかならないだろうかと懸命に抵抗し、その中で二つに別れてしまったユイとシェノンが溶け合ったことは僥倖であったかなと思います。シェノンにすればこのイベントはただ辛いだけのものであったかな、と。死よりも苦しいしあわせを願われ、記憶を失ったことで自死もできず生きてゆかねばならぬので、――正真正銘のバッドエンドです。
Lazaro & Cinq
(愛想の欠片もない冷々とした雰囲気纏う彼を見上げた男にもまた愛想など存在しなかっただろうけれど。)……ご機嫌麗しゅう、領主さま。朝早くから申し訳ない、ひとつ噂を小耳に挟みまして、(態とらしくも恭しく頭を下げて形だけの挨拶を済ませては、相手方の質問に顔を上げ目を細めながら首を傾けた。)
└ごめんなさい、ラサロさんだと思うとこの挨拶も何だか可愛くって仕方なくって…!
……一緒に、帰ろう。その子も連れて、外に行こう。もう、お前さんを手放したくはないんだよ。(昨日意図も容易く少年を手放したことを後悔した。もし、あの時あの男に少しでも抗っていれば、なにか代償を支払えていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。この子を危険な目に合わすこともなかったかもしれない。今更、ifの話をしたところでどうにもならないことはわかっている―だからこそ、今度は後悔をしないようにと、思うから。)
俺さ、ラサロともいてーけど…嫌々ここにいるんじゃねえの。ここでやりてーことできたんだ。俺のここが止まるまでたしかめたくてさ。他の奴はどうかわかんねえけど、俺はラサロにこれもらって奴隷になって、りょーしゅさまのとこにいてもさ、やっぱフコウなんかじゃねーなって。自分でたしかめてショーメイしてーんだ。――だから一緒に行かない
└正直サンクくんはラサロさんと一緒に帰りなさい!いや帰らないとだめ!なんておせっかい甚だしい心地で見守っていたのですが、サンクくんが奴隷としてのいのちを全うしたい理由を知って胸打たれずにはいられるものかと!声を大にして!!泣きたいです…。語り手さんたちの愛のかたちはそれぞれですが、サンクくんのラサロさんに対する想いはとりわけ印象的でした。
(ただ、男の中にある“何でも”とは男にとって忌むべき物を指していた。人を傷つけること、人を蔑ろにすること、人の命を奪うこと。人の死は間近で何度も見てきたけれど、自らの手で奪ったことは生まれてからの七百年間、殆どありはしなかった。例えそれが疎ましい人間だろうが、嫌悪する人間だろうが、その死を願ったことだって一度としてないからこそ、何でも出来ると言った男はまだなにもしていないけれど、何かをするときはそれが最初で最後に“なにか”する時なのだ。)……必要になれば、嫌でも……、
……安心しろ、俺のこと困らすのはお前さんくらいしかいねェよ。町のガキどもはみんな悪戯もしねェ悪さもしねェ、いい子ばっかだからなあ。(そんな軽口を叩いた声色は微かに震えていたかもしれない。彼の願いを叶えることを選んでも、別れが辛くないわけではないから。今この道を選んだことを後悔してしまう時だってあるだろう。それでも、今は彼の背を押してやるのがすべき事なのだと思えれば、そう思い込むことでエゴを貫けば、正面に見える焦げ茶を見詰め返す翡翠は慈愛の色に満ちているはずだ。)
└とても切ないです。
(稚拙な独占欲も、今だけの事なれど、きっとずっと男の中に巣食うことになる言葉だと少年が知ることは終ぞありはしない。)
└さり気ない一文がとても頭に残っていたので。
……なあ、坊主。お前さんと過ごした時間は、うるさくって、厄介で、心臓がいっくらあっても足りねェようなもんだったけどよ、……明るくて、あったかくて、楽しい日々だった。頭ん中をお前さんだけで埋めることはできなかったが、俺の胸ん中は坊主のおかげで満たされたよ。お前さんに出会えたことを悪夢だなんてもう思わねェ、会えたことこそ幸せだった。……ありがとう。
後悔がありつつも昇華されたのかなと。
└もしかしたら明日にでも失われてしまうかも知れない大切ないのちを置き去りにして、それでも幼い選択を尊んでお別れを受け入れたラサロさんの心境を思うと胸が張り裂けます…それでもここで語られたサンクくんとの日々はどうしたってやさしくて、見ているこちらまで同じようなあたたかさで満たされていくようでした。
その際にポケットの内側に在った翡翠を見付けたのならば、何処にも失くしてしまわないように、ごくりと呑み込んでしまおう。何処にもやらないように、誰にも渡さないように。
└身体の中に取り込むっていうのは原始的だけど本能的でとってもサンクくんらしいやり方だと思います。
ラサロについての裏話を少々お話しさせていただきますね。裏話と言うよりは裏設定と言うのでしょうか…わたしの中で決まっていながら表に出すことのなかった情報をこっそりと…。
まずラサロはノースウィンドの土地の生まれではありません。海を隔てた少し遠い国の生まれです。師匠である魔法使いが一時期ノースウィンドを離れて訪れた国で引き取りました。イメージとしてはスパニッシュ系で名前もスペイン語からとっています。一応意味もありまして、ネットの人名辞書を眺めながら選んだのが『神はわたしたちと共にいる』でした。奇しくもエマニュエルさんと意味が一緒と言うことを後々知りまして、一人にやけましたと告白します(笑)そしてスパニッシュ系と言うことで、太陽の国と言うのが御座いまして抱かれる印象と言えば陽気な人たちが多いかと思います。実のところそれを踏まえてラサロは関西弁訛りの気さくなおっさんと言う案もあったのですが、どう足掻いても死亡フラグばかりを乱立する気配しかなかったので没案となりました(笑)陽気なおっさんだったらまた違ったペアや展開があったのかなと思えばそれも気になるところですが!結果的に今の性格に落ち着いたのですが、幼少期は割りと斜に構えた子どもでした。思春期特有のあれはラサロにもたぶんあったと思います(笑)因みに若い頃は今ほどゴツくもなく、少し筋肉質程度の美丈夫と言った感じでしょうか。綺麗めな顔をしてました。たぶん今でもその頃に年齢を戻せばそんな感じになると思いますが、ラサロ自身は今ほどがでかくて不便ではあるけれど畑仕事とかに役立つので気に入ってるんじゃないかなあ。町の子供とかにも肩車して!とせがまれれば仕方なくやってらいいなあと言う個人的願望が………あ、ラサロはショタコンではありません。子供は好きですが、ショタコンではありません。どちらかと言えば父性愛に近いもので子供と接しています。今まで生きてきた中で女性といい感じになったことは何度かあったと思いますが、矢張り寿命の関係などで長続きはせず子供をもうけることもありませんでした。……と言った設定もあります。因みに使い魔の山猫と燕もスペインの動物だったり、イメージカラーもオックスブラッド:雄牛の血と言うことで、スペインの闘牛をイメージして設定したりしています。フリー活動の時の料理なんかもスペインの家庭料理なんかを参考にさせていただきました。
また、本編中に何度か出てきたラサロの師匠ですが詳しくお伝えしていなかったのでわたしの中でのイメージとちょっと齟齬があったようなのでさらっと設定を載せさせていただきますね。わたしの中では某魔法学校の校長をイメージしておりました。白くて長い髭を蓄えた痩身の老人。性格も茶目っ気があり心優しい、みんなのおじいちゃんと言ったところでしょうか。口調も大体そんな感じですね。ただ年老いた老人でも品のある、背筋のピンとした方でした。だからこそラサロは心から彼のことを尊敬していたのだと思います。また、お師匠さまはバルドさんと同世代とさせていただきましたが、バルドさんより先に他界してしまったのは人々のために魔法を使いすぎた、と言うところがあります。ラサロも恐らくそんな運命を辿るのかな、と考えていたのですが何れくる時を思えば無意識の内に魔力の消費を控え始めているかもしれません。そう言えば、オフがごたごたしていてあまり描けなかったミニイベント。ラサロは町の小さな病院を営む医者と言う設定でした。地域密着型の。なので、ご近所のおじいちゃんおばあちゃんと親しかったり近所の子どもになつかれていたり、わりと賑やかな日々を過ごす平和な穏やかな人と言うつもりで描いてました。もっと活動できればよかったなあ、と折角のイベントだったのでいま思うと勿体ないですね。数少ない和やかな時間だったのに…。と、まあ、こんな感じでラサロについての公にしていない設定は以上です。誰得情報ばかりで目の滑る文章だったかと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。此方までお目通しいただきまして、有り難う御座いました!
考えていることは全て口にしていた通りのものなので、裏話というよりは裏設定…というよりも言い訳になってしまいそうですが、浮かんだ内容をぽんぽん思い付くままに語らせていただきます!
サンクは刹那主義のような考え方の下で過ごしていて、「今」以外に興味がなく過去や未来を意識することもないような過ごし方でした。最後やラサロさん等に関して未来を意識するようにはなっていたりするのも関係や感情で生じた変化です。記憶の有無に関わらず倫理観がないこともあり善悪の概念も偏りがあるなど物事の判断も極端でした。基本的に全て自分の為というような考え方をしているので「誰かのため」というのも自分の為だと認識し、世の中は皆のエゴで成立しているとして、自分も他者も陥る状況は全てそれぞれが選んで得た結果だと思っています。それには死生観の偏りも影響していて極端にいえば、自分の意思に反して陥る状況に対してそれを脱したいなら「死ぬ」という選択肢をとれば良いと考え、それを嫌だというのならば現状を是として選んでいるとするようなものです。人に限らず何でも生死に関しての認識が軽いのは、生まれてから傍らに死が当たり前のものとしてあったからというのもありますし、元々そうだったとも。なので目的を成す為の障害があるならば「殺しちゃえばいーじゃん」と平然と言うようなこともある頭で、自分自身もそれを良しと思えば自死を選ぶことに全くの抵抗がありません。特に死にたいとは思ってもいないけれど生きたいと思って生きている訳でもないので死にも生にも執着がなく、例え奴隷という立場でなくとも好奇心で死にそうです。死ぬことが出来るのは一度だけという認識はあるのでサンクなりに考えてはいるんですが。それからカタカナの発音のものは口だけで大概ちゃんとは理解してません。根本的にその時感じたものが全てであり、それが過去の発言と反することでもその時感じて考えたことが全てなので、持続させる気があれば持続しますが、そうでなければ簡単に裏切ります。軽い言葉は軽く、約束もそれよりやりたいことがあれば破ることに躊躇を覚えず…代わりに私からごめんなさいを。
人でも動物でも何でも誰かに認識されてさえいれば自分が何者であるかに興味はなくどうでもいいというのも一貫していた考えですが、根本的に自分が人間であるとは思っておらずそれはラストイベントまで変わりませんでした。そもそも人間が何であるかなど全く理解しておらず、記憶が無い時にはラサロさんに目の前の自分の存在を認識してもらえればそれで十分でしたし、自分へ与えられるものならもう苦痛にはならない頭なので記憶が戻った後も特に違和感なども覚えません。寧ろラサロさんを苦しめる過去の自分に嫉妬さえしかねないような程。物語が始まる頃にはそうやって自分の生き易いようになっていた頭なのですが、取り乱したり動揺したり苦しむ箇所も考えてありました。ラサロさんがサンクの意思以外で身体的などの意味で傷付いたり害されるようなことがあればという想定はあったものの、結果的にそういう事態に陥らずに済んでサンク共々安心しています。実際、すんなりと領主の元に帰ろうとした理由の一端はサンクなりにラサロさんに何か問題が生じないようにと思っての事で、サンクには珍しく矛盾した守りたいなどといったような感情を感じるような相手がラサロさんでした。……話が少し逸れるのですが公開処刑の情報はサンクの耳に入っているのかわからなかったので反映させなかったものの、公開処刑はサンクにとってある意味最上の死に方だなと公開処刑の文字を見た時に感じました。出来ればラサロさんやルフトゥくんに見て貰いたいと嬉々としていそうな、そういった感覚の持ち主です。印が舌にあるのはお喋りだからこそ舌にあると面白いかなという個人的なあれだったんですが、ラサロさんはこんな悪趣味なところに付けたりしないだろうとイベントが明かされてから頭を抱えました…ごめんなさい。あと展開次第ではサンクが死ぬことになっても舌を切る選択もあったりしたのも、サンクが喧しい奴なので自らそれを断つというのも…と考えていたりもしました。喋れなくなったからといって苦しむような奴ではないので。
好きに色々と長々語ってしまっていますが最後にもう幾つか。サンクはどこか領主様という存在をニュアンス的にいえば父親(厳密には異なると思うのですが)のような存在として認識している節もあるかな…と。好悪とはまた違う位置にいる存在かもしれません。サンクにとって領主さまとラサロさんは、領主さまは自分という存在を認識させてくれる人で、ラサロさんは自分という存在を認識させたい人、でしょうか。それからサンクの名前の由来は意味を持たせないようにしたので適当に外国語の数字の中から純粋に語感で決めたのですが、無理矢理こじつけるとすると、サンクというPCを作る上で根本にあったサドマゾヒズムという点に関連して、ICDでのF 65.5という数字から…こ、こじつけですが!……などと、実際の内容と矛盾してもいそうですし、ちゃんと反映出来ていないような言い訳ばかりになっているので、ここら辺でもう終わりにしておこうと思います。ありがとうございました!
Lennart & Linaria
「…ちがう、夢なんかじゃないです。レナートさま、ねえ、お願い、ちゃんと見て。“ぼく”がそこに居ないの、本当は知ってるんでしょ?お願い…、お願いレナートさま、ぼくを見て。“リナリア”じゃなくて、ぼくを……ッ!(触れたい。彼に触れて、抱きしめて、自分を見てほしい。鏡を殴りつけても彼の元へは行けやしないのに、ドンドンと鏡を何度も殴りながらリナリアは必死に彼に話しかけた。――一度目は、あの日、目覚めたときに。二度目は穏やかな朝食の時間、あの温かいミルクと共に。そしてこれが三度目。きっと、最後のお願い。生まれてはじめての心の底からの“お願い”は、今までで一番切実で、必死で、そして悲しく痛ましく冷たい部屋に響いた。――もしもこの叫びが、彼の心に届いたら、そしたらきっと、きっと、 )――――最後に、……最後にお別れ言わせて、レナートさま。(彼の優しい声が、仕草が、表情が。すべてがリナリアではない“リナリア”に向けられているのだと思うと、気が狂ってしまいそうだった。鏡に映る彼の姿がじわりと滲んでいく。あたたかい何かが頬を伝い落ちていく感覚に、リナリアは二つのエメラルドを瞼で隠した)
└必死の叫びにどれだけレナートさんを想っていたのか伝わってくる場面だと思います。
└ラストのこの辺りは全部抜き出したいくらいなんですが、幻に逃げるレナートにちゃんと向き合おうとしてくれるリナリアくんが健気で泣きました…。
………わすれたままで、いいのに。しらないままで、いたいんだ。だって、思い出しちゃいけない気がするの。これを思い出したら、わたし、わたし、 は、…………、……きみに、さよならを、――――言いたく、ないんだ……。
└終盤のレナートさんのお姿を見ていると、正気でないからこそ正気でいられたのだろうなあと思わされました。最後にリナリアくんとのお別れを認められたことはあたたかくもあったのですが、ここから綴られるラストシーンが少しだけ背筋が冷えてしまうような描写もありつつ、悲しくて美しくてどうしようもなかったです。
………リナリア……、………リナリア、リナリア。あいしてるんだ、……だから、お別れなんて、…最後だなんて、いわないで……。(垂らされた一筋の蜘蛛の糸に縋るように。人形を抱き締めて、懇願した。―――「わたしを、ひとりにしないで」「ふたりで、生きていきたいんだ」次から次へと溢れ出るリナリアへの言葉が、段々と小さくなっていく。落ちこぼれの魔法使いは、簡単な魔法すら長時間使い続けることは出来ない。ひどく不安定な今の状態では、尚更。緩やかに、けれど確実に、あの子の声はフェードアウトして、 )――――…リナリア、ッ! (それが、最後だった。
└最後の最後まで愛を伝えられたのを幸せと思うべきか否か……。
――ぼくが、やくそく、やぶったから…?いい子じゃなかったから?リナリアじゃなくなった、から?……ぼく、が、………。(ずるりと力の抜けた体が扉を伝って落ちていく。鏡を、扉を、ずっと殴り続けていたリナリアの両腕は、いつの間にか切れて血が滲んでいた。けれどその痛みも感じない。もう何も――何もかも失ってしまったリナリアには、何も残っていないから。だから涙も出なかった
└元のお人形よりもずっと空っぽになってしまった彼が悲しいです。
…………、…レナートさま、ぼく、…ぼくね、レナートさまに、言わなきゃいけないことがあるんです。だから、……絶対、もう一回、会いにいくから、ひとりになんて、しないから…………。(「――だから、すこしだけ、まってて。」 扉に寄りかかった状態でリナリアは目を閉じた。闇のような睡魔が襲い掛かってきて、意識が段々と薄くなっていく。次、目が覚めたら――そこにはリナリアはもう居ない。誰にも愛されることのない“グラナート”として生きていくだけ。“リナリア”としての最後の日は、ゆっくりと、ゆっくりと、誰にも知られずに終わっていく。――閉じかけた世界の隅で、見たこともないリナリアの花が咲き誇っていた。金色の髪が振り向く。優しい、あのミルクのよう な微笑を浮かべて、 の名を呼ぶ。 、 。……誰の名前だろう。夢の狭間を揺蕩う少年には、聞き覚えのない名前だった。聞いたことのない、優しい優しい声だった。きっと、とても大切な、あの人にとって、とても大切な人の名を、何度も、何度も。見たことのない花と、見たことのない人が呼ぶ、聞いたことのない名前。そこはきっと、誰かにとっての楽園。――――“次”、目が覚めたら。)
└どこからどこまで抜き出すか迷った挙句決め切れず長くなってしまいました…。今改めて読んでもウッと苦しくなるんですが、リナリアとしての最期があまりにも悲しくて…主に愚息のせいなんですけど…申し訳ない…。目が覚めた後の彼はグラナートとして今まで通り生きていくの かなあと考えると、レナートとリナリアくんが過ごした日々は本当に夢や幻のようなものだったと思います。どうか彼のこの先がほんの少しでも幸せなものであるよう、願って止みません。
└レナートさんとの繋がりが途切れてもなお縋るように感情をむき出しにしてしまうリナリアくんのお姿があればこそ、静かなラストシーンには余計に胸が詰まりました。グラナートくんとしてのこれからを思うとたまらなく切ない気持ちにもなりますが、リナリアくんが最後に見た夢はきっと言葉で表せないくらいやさしいものだったのだろうなあと思わせる描写がとても綺麗でとても好きです。
気まぐれで情緒不安定な性格設定だったので、自分から何かを考えて行動を起こすレナートの姿があまり想像出来ず敢えて探索は控えめにしていました。キャラメイクの時点で死亡ルートを辿りそうな男だなあとは思っていたのですが、当初の予想を裏切らない結果となりましてリナリアくんには本当に……申し訳ないです……。人形にはレナートの死亡と同時に灰になる魔法が掛けられていた、という裏設定はあったのですがイマイチ活かしきれなかったような気がしてなりません。最後の最後でチラ見せする程度の設定 でした。
Ruska & Lucht
何も知らない少年に勝手に負わせた望みは、本当は自分が負うべきものであったのに。見つめ返す瞳に真っすぐ少年を映して、心からの言葉を返す。)君は私の幸せを考えなくてもいいんだ。君が自分の幸せを考えて進んで行くことが、私の望みだ。
└ルスカさんとルフトゥの運命が決まった瞬間でしょうか。このセリフを見て、ルフトゥは一生ルスカさんを守って幸せにすると決めました。
(ー向かい合った少年が全身で飛び込んでくるのへと驚きに眉を跳ねさせて、けれどそれも瞬時のことでよろめくこと無く抱きとめれば、とんとん軽くその背を叩いてからこちらからも力を込めて抱き返す。より一層近くなったその顔がいつになく優しく穏やかであることに胸が打たれる。見上げる青い瞳はまるで麗らかな青空、木々に降り積もる雪に覆われて忘れていたそのぬくもりに久しぶりに触れた心地がする。)
└ルスカさんの背中ぽんぽんが好きです。
(―互いに向かい合う形で並び、穏やかな枯れ葉色の瞳をじぃっと眺めた後、体当たりするように彼の身体へと飛び込んで抱きつく。その姿は決して大人びた少年ではなく、漸く甘えることを覚えた子供の姿。)…僕はね、アンタから学んだんだ。人を愛するカタチはたくさんあること、しあわせになる魔法なんて存在しないこと…――他人をしあわせになんて簡単には出来きゃしないけど、可能性を、道を、示すことは出来るって。……アンタは僕に道を与えてくれた。今の僕は、オッサンといることでしあわせなんだ。だから、今度は僕がアンタにしあわせの可能性を、生きる希望を、あげたい。それが僕の望みだ。(顔だけを上げて、彼だけへと贈る柔らかい眼差しに、飾り気のないこっ恥ずかしい言葉。自らの死は恐れないが、彼を失うのは恐いのだと。一緒に生きて欲しいと願った末に、暫し沈黙。じわじわと頬から耳にかけて顔が紅潮すると、今までの滑らかさが嘘のようにぎこちなく唇が動いて)――そッ、 そう望むのはワガママか!?
└ルフトゥくん…成長したなあ…と親のような気持ちになりました。直前のルフトゥくんらしい前置きもまたたまらなくかわいくてお気に入りです。きっとこの先どんなことがあっても、ルスカさんとの尊い繋がりがある限り彼は彼なりに正しい道を選ぶことができるんだろうなあと感慨深くもありました。
……ありがとう。私も君と過ごす日々で、忘れていた愛情を久しぶりに思い出すことができた。誰かとともに在ることは、とても幸せなことだと、もう一度教えてもらったんだ。ありがとう、ルフトゥ――(初めて呼ぶ少年の名前にありったけの親愛をのせて、誰でなくこの子だったからこそなのだと。共に過ごした時間は男にとってもかけがいのないものだと伝えよう。人間だった頃のように穏やかな心で、抱きとめる腕に確かな愛情を込めて。抱きとめた身のその頬が紅に染まった末に絞り出された付け足しへは、とんでもないとばかりに首を振って)そのぐらいわがままででないと、君らしくもない。
└一番涙腺が崩壊したシーンです。初めてルスカさんがルフトゥの名前を呼んでくれたことで、初めてルフトゥを一人の子供として見てくれたんだな良かった!!と言うのと、こんなダメダメな息子でも、君だったからこそだよと伝えて下さったのが本当に嬉しかったです。
……はっ、 ………う、……うううっ……僕だって、…僕の方こそ、ありがとう(遠い異国の地で空を意味する名前の少年の瞳は快晴のように輝いたけれど、しかしすぐに水が満ちて大粒の雨が降る。
└毎回もれなくルフトゥくんの涙をちょうだいしています。最後にはうれし涙が見られたのでよかった。
名前を無くした鼻づまりの少年は、ようやく、落ちていた名前を拾い、生まれて初めて、この名前であった事を神様へと感謝した。まるで、彼に呼んで貰うことが最大の幸福であったように。
└ずっと呼べずじまいにいた名前を呼ぶことができてよかったです。
「……君はきっと、いい魔法使いになるよ。」
└頑なに魔法使いになることに反対していたルスカさんのこの一言に心を打たれない訳がないです。
(晴れ渡った瞳はまさに空の名を冠たるに相応しいものだったけれど、あっという間に天気雨に隠れてしまった。ぼろぼろ零れるそれは暖かな気持ちが溢れる様で、嗚咽を堪えて噛み締めるように紡がれるありがとうと一緒に、じわりじわり確かな熱を持って身体へ心へ染み込んでいく。)…よし、分かった。私の命を君に分け与えよう。君が世界を愛するために、私が世界から受けた愛を君へ。
└ここのルスカさんの言葉が好きです。
……君が無事で良かった。私の力が君を押しつぶしてしまわなくて、本当に良かった。魔法は時に望むものを与えてくれないから――これで、良かったんだ。(失敗への恐れはきっと少年よりも大きかったのだ。頬が濡れる感覚でようやっと知らず涙が零れていたことに気付く。零れるそれは安堵の証で「年を取ると涙もろくなるな…」気恥ずかしそうに呟いて程なく途切れた涙の跡のまま優しい笑みを浮かべた。)
└ルスカさんが初めて見せた涙はうちの子の涙より何倍も美しかったです!!!
└ルスカさんの静かな涙にもらい泣きしてしまいます…ご家族との辛い思い出を抱えていらっしゃるからこそ、ルフトゥくんと親子にも似た関係を築くとこが出来たことがとてもあたたかく感じられました。こぼれるものを誤摩化すような口振りもその後の笑顔も、見ているこちらまでたまらなくやさしい気持ちになれるようです。
私は君を殺して、生かした。生まれ変わった君は、私の魔法使いとしての初めての息子だ。愛しい我が子と共に過ごす時間は、ひどく、本当にひどく久しぶりだけれど……いつか君に私の名を分ける日を楽しみに、とても楽しみにしているよ。
└空の魔法使いがルスカさんの名前を貰う時、二人の関係は変わっているのでしょうか。様々なその後を考えるのが楽しいのは、全てルスカさんのお陰です。
「僕は一度たりとも、貴方が見せてくれた魔法で傷ついたことなんてない。ぜんぶやさしいものだった。……いつも、僕を助けてくれていた。僕達の思いが奇跡を起こしたんだ。」
└ルスカの魔法使い冥利に尽きます。
最初の出会いから最後までずっと少年に名前を付けるつもりは全くありませんでした。もし名前を請われていたら「自分でつけなさい。君がこれからを生きていくための第一歩として」とでも答えていたでしょう。ラストでルフトゥくんに名前を分けるのを了承したのは、彼が自分で考えてそれを言いだしたから、という部分が大きいです。ちなみにルスカは紅葉を意味していて生来の赤毛に由来しています。赤ん坊から少年時代にかけては赤毛でしたが大人になるに連れて落ちついた色になり現在は何処にも面影がありません。
2ndで出てきた洞窟は、森の中に点在するルスカが魔法で囲っている採集ポイントの一つでした。洞窟の中には冬の先駆けに花咲く薬草があり、その花の蜜は非常に栄養価が高いもので希少価値も高く精製した丸薬は貴族の間で評判だとか。そして、花弁には微量ですが強力な毒素が含まれているため、そちらを精製すると毒薬も調合できます。蜜の味に隠して配合すれば全く同じ姿で逆の効果を及ぼす薬が出来上がります。雑貨屋アーノルドでしか取り扱ってませんし量も限られているので非常に高値で売れます。ルスカの貴重な収入源の一つですので、頑張ってお仕事してました。
元々人間時代には雑貨商として生活していたので、人嫌いとは言うものの対人の交渉スキルは持ち合わせていました。4thで領主様とやり取りするときに利で訴えていたのは、彼の立場を鑑みて交渉を優位に進めるには情よりも利を強調して話した方がうまくいきそうだと考えたからです。自分の情に厚い部分が裏目に出るのを恐れて、あえて客観的な利害を見ていた面もあるとは思いますが。
蛇足ですが、もしルフトゥくんが貴族に戻る気満々だったら探索で名前の出てきたメルヴィンさんに貴族衣装の一張羅仕立ててもらおうかなと思ってたりもしました。
裏話?ねぇんだなそれが。と笑顔で言えるレベルで応募当初ルフトゥには何もありませんでした。一番の裏話と言えば、死ぬ程PLですら言い難く且つ打ち難い名前にしてしまった事でしょうか。それ以外は全て管理人である安倍様がルフトゥの為に構築して下さったものに便乗して使わせて頂いた感じです。(その節は本当に有難う御座いました)
簡単に箇条書き出来るレベルですが、
・記憶を無くしたら最初は自分は貴族であると断固言い張る。途中でなんかおかしいと気付く。
・魔法使いに憧れるし魔法使いになりたいと思う。
・ジブリに出てきそうなキャラっぽいロールにしよう。
・イメージCVはスネオかな?
ぐらいでしょうか。
PL情報としてルスカさんがルフトゥの為に動いて下さっているのは知っていましたが、(その節は本当に有難う御座いました。もっとルスカさん自分の為に動いて下さっていいのに!!)貴族に戻りたいと言う気持ちが薄かったのは、サンク君と言う友達に出会ったり、魔法使いになりたい気持ちが強かったからですね。もしそれがなかったら貴族に戻りたいと願ったと思いますし、ルスカさんが死んでしまうことを知っていても奴隷の印を解いたかもしれません。
最後のイベントでルスカさんに本当のしあわせはなんだと質問したのにはちゃんと理由がありまして、もし家族の元にいくのがしあわせとの答えだったら奴隷の封印を解いていました。奴隷の封印を解くと言うよりも、ルスカさんのしあわせを叶える為ですね。でも違う答えだったので破って捨ててしまいましたが。
余談ですが、領主様がやって来た時にもし離れ離れになっていた時は、FREEの冒険7にレスを追加して、ルスカさんの保管する毒草を何種類か拝借して、小者らしくラストで領主様を毒殺しようとして失敗。みたいな結末をやる予定でした。一日でも長く生きていたいけど、領主様さえいなければ自分は自由になれるなぁ、とうすらぼんやり考えていた子なので、漸く掴みかけた幸せを奪われる事で明確に殺意を覚えるかな、と思っておりました。
あとは、最後のイベントではルスカさんには生きていればいい。ルフトゥは死んでしまってもいい。と思っていたことを暴露致します。なので、安倍様からの横レスを見た時は「マジかー!!!やったー!!!!奇跡が起きたー!!」と画面の前でBANZAIしてました。本当に。そして号泣しました。本当に。