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Baldo & Beate
………笑って生きるって、とっても難しい。ね、ベアテ。俺は、此の地に住まうものすべてが大好きだよ。でも、誰かが笑えば誰かが泣くことになる。他の地の知らない人間なんてどうだっていい。俺は、俺のあいするノースウィンドのすべてが幸いなら、それで。でも、どれだけ年月が経っても尽力しても、その唯一つの願いが叶ったことはないんだよ。平等なんて紛い物に騙される者は在るのに。
└すべてを等しく愛するバルドさんだからこその憤りがとても切ないです…。
「………ハァ…おまえもあの仔も同朋たちも彼らの拾い仔も、みんな傷が付かない為にはどうすればいいのかなあ。」
└博愛のバルドさんだからこその言葉ですよね。
……バルドさんが好きな人なら、僕も好きになれる気がします。だから、(飽くまでも彼に其れをして欲しいのだ。今直ぐに未練を断ち切れるように。もの言いたげに視線が向けられるが、其れも僅かのこと。彼が手を離さなかろうと子どもは本当の主へと向かい頭を垂れた。)僕……が帰れば、バルドさんは敵じゃないですか。僕、だったら、帰ります。記憶も……なにもないですが、使ってくださるなら、おねがいします。
└「バルドさんが好きな人なら」というベアテくんの言葉がぐさっと突き刺さります…ベアテくんが恐らくはじめて明確な意志を持って踏み出した一歩がのちのちの結末に繋がるなんてあんまりすぎて、でもここでのベアテくんの言動には確かに胸打たれるものがあって、どうしようもないです…。
Emmanuel & Philomele
――ねえ、エマ。僕ね、エマのことがだいすきだよ。ほんとの僕がどんなに領主さまをすきでも、僕はエマがすき。フィロメルはエマがすき。――なにがあっても、きっと、かならずよ。エマ、エマ……。(青年の胸元へと顔を擦り付けて、繰り返す言の葉はおまじないの響きを帯びていた。焦がれるような微笑みはそっと静寂の地下室へと溶けていく。目一杯甘えたのちは青年を見上げる双眸も落ち着きを取り戻していよう、「おなかすいちゃったなっ」なんていつものようにおどけて見せた。)
└ものすごい可愛かったのですが「嫌なフラグ立ててくるなあ…」という気持ちにならざるを得ませんでした。(すみません)
抱き寄せたままの姿勢で少年の好きにさせながら、繰り返される好意を聞いている。やや切実な響きを帯びたそれはまじないのようにも聞こえたが、それでもエマニュエルの胸の奥は熱くうるみ、流れ込む衝動に震えた。それは、まぎれもない歓喜の震えであった。)ええ……、わかっています。……わかって、います。フィロメル……わたしに光をくれたこども。なにがあっても、わたしはきみを思っています。きみがだれであっても。……これだけは、まちがいなく真実です。(指が、少年の滑らかな髪を通ってゆく。――身体が、自然と動いていた。身を屈め、少年の頬に手を添えそっとこちらへ向かせると、その頬に落とそうとするのは親愛の口づけ。かつて世にとある宗教が起こり、エマニュエルも神を信じていた頃そうしたように。
└エマさまの心理描写の美しさと、所作の恭しさがぎゅぎゅっと詰め込まれたとっても大好きな場面です。エマさまには神聖という言葉もよく似合うなあと…なんて清らかなんでしょう。
領主さま……、(笑みを形作る唇から漏れたのは甘い声。瞳は潤み、手が奮える。この世のものとは思えない嘆きを感じていたのはフィロメルだった。一方で、土曜日生まれの奴隷の子どもは歓喜にも似た感情に打ち震えている。ゆめゆめ忘れてはならぬことを思い出せたからだ。――嗚呼だって、自身はこの男を“ ”ために生きてきたのだから。繋いだ手を振り払うようにして離したのはこちらから。そうして一度だけ、領主からは見えないよう、青年にしか見えないよう振り向きざまに唇を動かした。“ごめんね”――そう、ぐしゃぐしゃに歪んだ笑顔で。)ああ、ああ――領主さま、なんということでしょう。あなたさまのご恩情をいっときでも忘れてしまうなんて、この世でいっとう罪深いことを 僕はおかしてしまったというのに。こんなにもおろかしい僕のことを、あなたさまは手ずからひき取りにおいでくださったのですね。僕のこころはいま、あなたさまへの感謝といとしみに満ちあふれています。――いつくしき領主さま。すべてはあなたさまの尊きみこころのままに。あなたさまのためだけに、この心臓は脈を打つのですから。(軽やかに歩を進め、領主の元へと恭しく膝を突いたのち。歌うように言葉を紡いで少年は頭を垂れる。記憶を取り戻したというよりは、人格が入れ替わったような様相だったろう。蚊帳の外であると言わんばかりに、青年には目もくれぬまま。“いつわり”でなくなった少年の姿がそこにはあった。)
└言った傍からもう……サバト……。ついにこの時がやってきてしまったか……という気持ちと、PLさまの表現される“フィロメル”から“サバト”への変化に感動していました。すごい人とペアを組んでしまった。
――ふっ、ふふっ、ふふふふふ!ああ領主さま、あなたさまのお耳を汚してしまい申しわけございません。魔法使いさまがあまりにおいたわしくって。あなたさまのお美しいくちびるを使われる価値もないことです。どうか僕にお任せください。(跪いたまま笑声を弾けさせ、恍惚の瞳で領主を見やる。そうして上品な所作で立ち上がったのなら、青年へと向き直り距離を縮めよう。かんばせに浮かぶのは先ほどの崩れたそれとは違い、欠けたところのない笑顔だ。)おかわいそうな魔法使いさま。あなたは領主さまの尊きみこころを満たすお力がご自身にあると、そう思い上がっていらっしゃるのですね。――ああ、あなたを責めたいわけではないのです。あのお方のためにすべてをささげたいと願うことは、 生きとし生けるものとして当然の欲求なのですから。でも――、(光をなくしたガラス玉は、同じく感情の失せた青年のおもてを見つめていた。言葉は一度途切れ、息継ぎのために冷たい夜風をそっと吸い込む。)せんえつながら魔法使いさま。“あなたさまのもの”と仰るのが名前を与えた少年のことでしたら、あなたはとんだ思い違いをしていらっしゃるのですよ。僕はずうっと領主さまのもとへと帰ることを望んでいました。あの雨の日、意識を失うそのときまで。僕と領主さまをふたたび引き合わせてくださったことは感謝しています。――でもそれだけ。あなたがなすべきことなんて、他にはただのひとつも残されてはいませんよ。
└ああ……好き……(心から血を流しながら膝をつく)
(吟ずるような声音は異様なものとして静かな丘に響こうか。人形のような皮膚の下では、ひと呼吸ごとに内臓が引きちぎれていく。自らの心臓に杭を打ちながら、サバトはうっとりと微笑んだ。気持ち悪いでしょう厭わしいでしょう――そう見せつけるように。)
└こういう姿がサバトくんの真骨頂なんだと思うのです。美しい醜さというか。
思い上がっているのはお前のほうではありませんか、“サバト”。お前に領主さまのお言葉を代弁する権利などありません。わたくしが領主さまをご満足させることが出来るのか否かを決定するのもお前ではありません。お前の意見は求めていない。……それとも……若きころより魔力こそ衰えていますが、ひとりの魔法使いの価値よりも、そうして囀るのが能のちっぽけな奴隷ひとりの方が領主さまのお役に立てると言うのですか?……それこそいたわしいほど愚かな考えです。二度は言いません、お黙りなさい。
└この辺りからのタイトル会話もそうなのですがエマさまの辛辣な口調がわたしはとてもとても好きで、そのときのエマさまの心情を思うとときめいている場合ではないのですが、すごく…罵られたいです…。横道に逸れましたが「若きころより〜」の台詞が魔法使いとはなんたるかを端的に表していてエマさまかっこいい!とどきどきしました。エマさまにお黙りなさいと言われたいです。黙ります。
もう……、おやめください、魔法使いさま。僕はフィロメルじゃない。あなたが拾ったのがサバトだったのなら、こんなことにはならなかった。あなたや他の子どもたちと、この僕ひとりとを天びんにかけるおつもりなのですか。あなたが僕をゆずり受けたところで、だれの救いにもならな――、……。(言葉は不意に途切れる。唇は確かに笑みを形作っているのに、そこから生まれるのも刃物であるはずなのに、目の前がぼやけていく。頬が冷たい。剥がれたコーティングが水分として降り注いでいることに気付いたとき、サバトは生きた心地を失った。これまで積み上げてきたものが全て壊れてしまう。あいつを“ ”ために心臓を削り取って少しずつ作り上げたものが、この一瞬で。咄嗟に噛み締めた 唇から滴り落ちるのは赤い液体。胸元に秘められた塊に縋るようにして触れていることには気付かぬまま、空いた方の腕で乱暴に目元を拭った。)
└サバトは優しい子ですよ……優しい子じゃなかったら、こんなひどい事態にはならなかったんですよ……。
「人間並みにしてみせようかと。……調教は得意なので。」
└してください。
(頬を生暖かいものが伝い落ちていく。もうこちらを振り返らない少年の背を見つめながら、男は泣いた。忘れ去られていた、実に数百年ぶりの涙だった。その背に、震える声をかける。この静かな丘の上には、声を遮るものは何もない。)“ぼく”は間違っていた。きみは“フィロメル”じゃあない。“サバト”……その名を、忘れることなく記憶に留めて……はじめから名を呼ぶべきだった。“フィロメル”……きみに対しても間違えた。きみはいつわりじゃない。はじめから真実だった。たった今、そう確信した。でもひとつだけ、これは間違えていない。きみが、なにものであっても……ぼくは、きみを思っているよ。――だから、ぼくはこれからきみを裏切る。どうか憎むならぼくを。舌をちぎりとるのならぼくの舌を。……自分を憎むことは、どうかしないで。(魔力を纏った指先が、闇の中に輝く。その手は、緩やかな軌道を描き、……エマニュエルの心臓の上へ突き立った。まじないの光は男の身体の中に刻まれて、やがて馴染んでいった。もう二度と――取り出すことのできないように。)ええ……まことに、口ではどうとでも言うことが出来ます。しかし……戯言を真実にする魔法というものもございます。……攻撃魔法のひとつですが……人々は呪いとも云いましょう。今、自らの身体に呪いをかけました。あなたさまのために働きます。……その誓いを破れば、呪いはわたくしの身体を食い破り、……この身は滅びることとなりましょう。呪いがまことのものかは、……この丘にかかっていた魔法を解いた……あなたさまの共に尋ねれば、おわかりになるはずです。……誠実の証に、命をかけます。わたくしの命など、領主さまにとっては芥に等しいものでしょうが……かならずや、あなたさまに益を齎してみせます。どうかこの魔法使いに、お慈悲をくださいませ。……どうか。(呪いに蝕まれ、萎えた足と重力に逆らうことなく膝をつきながらこうべを垂れ、魔法使いはふたたび懇願した。)
└まるっと抜き出してしまい恐縮です…この場面に至るまでにも度重なるエマさまの懇願に半泣きで土下座しながらレスをお返ししていたのですが、ここではあまりのことに一瞬なにが起きてしまったのか受け入れるのが怖くて悲しくて気付けば涙とともに崩れ落ちていました。エマさまの数百年ぶりの涙に背中を向けて気付けなかったこともそうですが、サバトとフィロメルふたりともにかけてくださった言葉があまりにも切なくて、でもやさしくて、どうしようもなく…エマさまがここまで命をかけてくださるとは正直予想外のできごとだったからこそ、この時点ではありがとうよりもごめんなさいの気持ちの方が強かったです。振り返っている今でも気持ちがまとまらないくらい、弱々しいエマさまのお姿には心臓が潰れてしまいそうで…うわあああん…。
う……、っあぐ、――うあああああああ!(仮面は一瞬にして崩壊し、静かな丘に響くのはサバトでもフィロメルでもない、ただの子どもの慟哭。自分自身を取り繕うのが得意だった。それでも中身はたかだか十の少年だ。四肢を動かし地面を這いずれば青年の元へと近寄ることは叶おうか、伸ばした手で青白い肌へと触れる勇気はなかったけれど。)ふっ、……ぐ、……まはっ、――エマはわるくない、っがうよ、……エマは、まちがって、ないっ……ぜんぶぼくが、っるいのに、エマのせいじゃない、のにっ……うえっ、して、どう、して……。(しゃくり上げ、咳き込んで、喉から声を絞り出す。乱暴に口を動かしたせいで唇にはまた血が滲むけれど、それには構わず少年は言葉を続けた。両膝を突き両手 を胸に俯いて、罪を告白する子羊のように。)……ぼく、うそ、つきなんだっ……ずうっと、っぐ、ぼくのせいで、ねえさんがしんだ、から……、っろされたから、だからぼくは、あいつをころしてやるために――!(明確な殺意を口にした瞬間、少年は声もなくその場にうずくまった。これまでに幾度となく感じたことのある腹部の痛みに脂汗を滲ませながら、苦しげな体勢はそのままに顔だけで青年を見上げる。)……ぼくってね、あくまなの。ごめんねエマ……。(汗と涙にまみれたかんばせは、弱々しく笑っていた。)
└サバトーーーー(泣)(自Cが泣かせたことを頭の中から消しながら)
「サバト。……きみのせいじゃないと、ぼくが言っても、――だれがいっても……きみは救われないだろう。ぼくが悪いのだと言っても、きみは受け入れないだろう。きみには悪いことをしたと思っているよ、やさしい子。先ほども言ったとおり、ぼくはきみを裏切った。……苦しませるのがわかっていたから……、こんなこと、するべきじゃなかった。ぼくの大切なひとたちと同じことを……きみにした。」
└相手を思う気持ちは尊いのに、どうして選べる方法がこれしかないんだろう。どうしようもないもどかしさ。
「あえて言うよ……きみは悪くない。きみだけが……悪いんじゃない。理解したね?“ルネディ”に、……そして“サバト”に、隷属の印を刻んだ人物を。なにもかものはじまりはぼくだ。……わかるね?ぼくはきみたちにとっても死神だった。きみを、そしてきみの姉を苦しめたのはぼくだ。領主さまを殺めたいと願うなら……まずはじめにぼくに刃を向けなさい。恨むなら……ぼくを。きみの罪を、……背負うことが出来るのは、きっとぼくだけだろう。」
└エマさまの相手をそっとやさしく包み込みながらも物事をきちんと理解させるような諭し方が尊くて大好きです…サバトにとっては頷けるものではなかったとしても、救いの言葉であったことには違いありません。エマさまを海のようだと感じてしまうのは瞳の色のみならず、深く広いこころの印象もあるのだろうなあと思います。
(いっとうたおやかな微笑みがエマニュエルの唇に浮かんだ。宗教画に描かれた高次のもののそれのような、おそろしく無感動な微笑みが。)……奇遇だね、サバト。ぼくも悪魔と呼ばれていたよ。
Mathis & Chainon
「――…、…やっぱ待ってんのかなぁ。俺のこと。」
└今迄はシェノンのことを考えないようにしていらっしゃったのに、想いを認めてしまったがゆえに零れた呟き…、意識してくださっていると判じられる一言に思わずにやけておりました。
(少年が飼い主の許へと戻されることになったとしても多分、俺は――。)
└当初からシェノンのことは早々に放り出されることは予測していたのですが…、意味深なロールに戦々恐々としておりました。
――お兄さんっ、おかえりなさあい!(真白の靄に隠れるように、己に宿る色彩が淡いことを利用し――路地の死角に隠れて、青年が目の前を通りがかる折に抱き着き、お迎えとしようか。無邪気な笑顔を浮かべ、常の如く甘え付く。)さむいでしょう、早くお家帰っていっしょにねよう? お仕事おつかれさまなの、
└こういうことをやってくださるからいとしい…堕ちないわけがないです……。
「――シェノン、」
└名前を呼んでくださった!! 大切な一場面ですので挙げさせてくださいませ…、名を呼んでくださって嬉しいのにとても切ない場面で心が震えておりましたが、シェノンはとてもしあわせでした。
「…――俺のこと、赦さないでね。」
└お兄さんってすごくずるいと思うのです…、赦さないでね、って、すごくずるいです。この科白を逆手に取ることは出来ないかしら、とずっとぐるぐる考えていたのをよく覚えております。
…ふふ、ねえ、お兄さん。もっと呼んで、…シェノンって。(だめ? なんて、甘えるまなざしを端正な顔ばせに注いで希う。一度奏でられた名が運ぶ幸せを知ってしまっては、我慢は中々に難しい。魔法使いがベッドに横たわれば常の如くその懐に潜りこみ、この時期は懐炉の役目も果たさんとしなやかな体躯に縋りついて。鼓動を刻む胸元に耳を寄せて、小さくわらった。)…ずぅっとね、こうしていたいな。すごくしあわせなんだもん…、(崩壊の兆しなど知らぬ少年は、泡沫の幸せに溺れるまま甘く囁いた。)
└領主様に密告し、このしあわせが崩れ別れの未来が必ず来るとわかっていたからこそ余計にこの台詞は胸にぐっときて……今見直しても辛いです…。
(使い魔へも挨拶を忘れぬ少年の頭へ手を置いたのは“おかえりなさい”への返事として。其の時少年の水色を梳き撫ぜる手付きがまるで愛しむようであったなど、反して銀色を見据える顔ばせは何処か愁いを帯びていたようであったなど魔法使いも知る由も無かっただろう。)
└何気ない仕草に慕情が溶けだしておりまして…、忍び寄る領主さまの恐ろしさと今迄にない糖度の高さに酔い痴れておりました。
…、ちょーしにのんな。(強請るような甘やかな銀を見据える双眸に宿ったのは僅かな迷い。呼べば益々深みに嵌まり、此の違和感を拗らせるだけだと知っているから。少し間が空いたのは返答を迷った確かな証拠であるが、ふっと薄く笑みを乗せた顔ばせや双眸にもう迷いはない。ぐりぐりと少年の額を人差し指で押しながら放った一言は言葉に反して響きは柔らかかっただろう。)
└あまあまです…、マティシェノが最も甘かったのは此処でないかな、と思っております。マティスさんが最後だからと甘やかし、甘えてくださった場面。とても好きです。
「…………おまえが、…領主サマの奴隷じゃなけりゃよかったのに。」
└マティスさんが斯様なことを仰ってくださるなんて誰が予測しましょう…、嬉しさで思わず涙致しました。お兄さんずるいです…、すきです。
――…やっぱ無理、寒すぎて眠れない。……、シェノン。(懐に縋りつく少年の背をぽんとひとつ叩く、其れがベッドから出るという合図である事は恐らく察しの良い少年ならば知れる筈で。冷たい床へと足を降ろせば魔法使いは常の如く厨房へと向かい、マグカップをふたつ手に持てば「作るけど、飲む?」とゆるりと首を傾げた。)
└マグカップをふたつ持ってくださっていたり、背を叩いてくださったり、しっかりと変化している暮らしぶりが見え、その上当然のように名を呼んでくださったのがうれしくてしあわせで。
「…えへへ。だって、うれしいんだもん。お兄さんが僕のこと呼んでくれるのも、…あたま撫でてくれるのも、ね。ぜぇんぶうれしくって、とおってもしあわせなんだよ。」
└マティスにとっては些細なことでも都度全力で喜んでくれるシェノンくんがほんっっとに愛しいです……好き…!
……まあでも……今ならちょっとだけ、わからなくもねーけどさ。(少年と共に居る刻を楽しいと感じる此のこころを幸福と呼ぶならば魔法使いも少年と同じなのかもしれないと、わからないと逃げずに考え思う事が変化への第一歩だ。)
└ほんとう変わってくださいましたよね…マティスさん……。
……そ、無理なんだよ。(だって己は少年のことを――。苦かった表情は何時しか諦観したように無へと変わり、伏せた双眸と共に溜息を落とそう。)
└諦めないでまだわからない…! と裏方は必死でした、笑 己のしてしまったこと故か諦めて最終的には達観迄至ってしまったお兄さん、哀愁纏うマティスさんはそれはそれでとても色気があると思うのです…。でもこれを突き崩さねば、とシェノンと共に奮起しなければと覚悟を決めた一場面でした。
へーえ……俺好みに作れんの? いーよ、やってみなよ。上手に出来たら頭撫でてあげる。(鍋片手に待機する少年を見ては挑発的に笑んでみせ、お望みのままに火を起こせばさあ少年のお手並みを拝見するとしよう。)
└挑戦的に微笑むお兄さんうつくしい…、こうやってシェノンのやる気を灯してくださる場面が共に遊んでくださっているようで、とてもすきでした。
「俺がなにやってんのかも、如何生きてきたのかも知らないでよくそんなこと言えんね。あーでも逆に知らねーからこそ言えるのか。」
└知らないからこそ…知っていても変わらぬのですけれど。シェノンはお兄さんと共に生きたいだけなので、足掻くばかりですね。
想う?大切にしてる?そりゃね、おまえと居ると楽しいなって思うことはあるけどさ。……でも俺が俺である限り、おまえが領主サマのモノである限り、一緒は無理。絶対に。――だって俺は領主サマに仕える“忠実な”スパイだから。(口唇が薄く綺麗な弧を描き、乾いた笑みが顔ばせに張り付く。)
└「おまえと居ると楽しいなって思うことはあるけどさ。」この一言に喜び、続く科白と笑みに絶望が忍び寄って参りましたね…。でも此処で噛み付かねばそれこそマティスさんの仰るとおりになる、と領主さまが何時訪れるやも知れぬ時分に相当冒険をしておりました。
(鮮やかな色彩放つ外見とは裏腹に中身は此の世の穢れや闇を吸収して漆黒に染まり、仕込まれた躯は日々疼いて快楽を求めてやまない。けれど魔法使いは――マティスは、“あの男”のようにただ快楽を貪るだけの屑にはなりたくなかった。魔法使いは考える。憎き師と別の道を歩みながらも楽な生活が送れ、且つ己の欲求をも満たせる方法を。)
└お兄さんの来歴に本編のシリアスさを忘れて興奮しておりました…、マティスさんの生き方の切なさ、シェノンとの噛み合わなさを痛感した場面でもあります。
「教えてあげる、俺がなにを諦めたのか。……――俺はね、おまえを諦めたんだよ。領主サマがシェノン…おチビちゃんのこと捜してるっていってたからさぁ、素直にここに居ますって答えちゃった。」
└手酷くされることやシリアスは大好きなので、諦められたときいて裏方は喜んでいた…なんて、そんな。
(諦められたことに心はじくじくと痛みを発し、捨てられたくないとの想いが膨れ上がる。一度払われた手は再び彼の頬へと添えられて、柔らかな御髪に指先が絡んだ。言葉には出来ない想いを籠めるように、)――最後だからシェノンって呼んでくれたの? 最後だから…あんなにやさしく、触ってくれたの、あんなに…大切そうにしてくれたの……? 最後、だから? 少しでも楽しかったって思ってくれたから? シェノンの意味って…――っひぅ、ふぇ……やだぁ、…やだよおにいさん――、(言葉は最後まで紡がれず、涙に掻き消されて。銀からその色彩が落ちてゆくように、大粒の雫が頬を滑り、少年の哀しみを表すだろう。駄々を捏ねるように水色を振って別れを否定する。御髪を絡んだ指先に力 がぎゅうと入り、)
└シェノンくんの言葉と涙にぎゅうっと胸が締め付けられました…裏切りにも近い行いをしておきながらそれでも手を伸ばしてくれるところもまた釣られてボロ泣きです……ごめんなさいそれでも愛してます…。
……それは、(何故、如何して。そんなもの――、真直ぐに訴える濡れた銀色から逃れるように視線を斜め下へ落とし、魔法使いは言い淀んだ。当初は少年に真実を告げる心算は無く、何れは此処に来るであろうノースウィンド領主が来た時に少年が其の言葉の意味を察すれば、己のことを恨んだかもしれないと思ったから。そうすれば絶望に銀色を染められたかもしれないと。多分きっと、嫌われたかったのだ。魔法使いが領主へと簡単に少年を売ったのは後々面倒を引き起こさない為でもあったけれど、其れ以上に少年から離れなければと多少なり思った節もあったからで。そう、優しくしたのだって少年が謂うように此れで最後になるかもしれないから己の悔いが残らないように接しただけのこと。ただそれだけ、けれど離れ難いと思いつつあるのもまた己のこころの変化を示す予兆。だからこそ手遅れになってしまうその前に少年から離れるべく、純真無垢な少年のこころを抉るのも厭わず魔法使いは笑顔で残酷な真実を吐露したというのに――“何故”はこっちの科白だ。ギリッ、苛立ちにも焦りにも似た痛み伴う感情が湧き上がり魔法使いは奥歯を噛み締める。淡紅の瞳に映ったものは絶望しきった少年の顔ばせではなく、花の咲いたような華やかな美しい笑顔だったから。)――…なに。ヤだ、やめろってばそーいうの……気持ち悪いんだよ。離れろって。諦めろって。ばっちい奴隷のくせに……売られたってのに、……っ、んで……笑ってられんだよ。 好き、とか……おかしいだろ、(絶望して、憤慨してくれればいいと思っていた。けれど少年はなんといった?魔法使いの顔ばせに張り付いていた笑みは少年の笑顔を映した瞬間に消え失せて、信じられない物でも見たかのように唖然と困惑と動揺で彩られる。橙色の髪へと伸びた少年の指先を払うことも出来ず、其処に籠められたあたたかさにまるで穢れでも浄化されていくような心地を覚えては魔法使いは泣きそうに眉を顰めた。ああ、だから、銀色に染められる前に突き放したかったのに、これじゃあ――。)……おまえが居ると邪魔なんだってば。仕事中におまえの顔が浮かんだり、早く帰らなきゃなんて思ったりさぁ、……そーいうの、ほんと…いらねーのに、…クッソ、“仕事”が出来なくなっちまったら俺は、俺が俺でなくなったら、あの男みたいに……っ、 おまえと居ると俺が変わっちゃいそうで、そんなの絶対ぇイヤなんだよ。此のカラダはもう、………こわれちまってんのにさ。(魔法使いの細い指先が己の首へと這う。此の煌びやかな首飾りの下には常に赤い花が咲き、一日たりとも枯れたことはない。結局はあの男とやっていることはなにひとつ変わりなく、それでも、仕事だからと言い訳すれば目を逸らすことは出来たのだ。けれど日に日に銀色で世界は彩られ仕事にも影響が出始めて来ている。このまま行けば何れ仕事に支障が出ることは明白で、そうなると仕事だからと正当化して来た行為もただ肉欲を満たす為だけのものになってしまう。そんなのあの男と一緒だ。)
└長い抜き出しすみません…! 削れませんでしたこんな可愛いお兄さん……。心を動かされることはあっても内面まで引き摺りだされることはなかったのに、こんなにも揺らめいて弱い部分を見せてくださいまして、ほんとうにうれしかったです。そしてとても愛らしかったです。いとおしいです…。
……おまえが居ると邪魔なんだってば。仕事中におまえの顔が浮かんだり、早く帰らなきゃなんて思ったりさぁ、……そーいうの、ほんと…いらねーのに、…クッソ、“仕事”が出来なくなっちまったら俺は、俺が俺でなくなったら、あの男みたいに……っ、 おまえと居ると俺が変わっちゃいそうで、そんなの絶対ぇイヤなんだよ。此のカラダはもう、………こわれちまってんのにさ。
└正直シェノンくんに絆されてしまうマティスさんのお姿が見たいとずっと思っていたのですがここでのマティスさんにはうわあああ…その生き方を変えられないからこその揺らぎがうわあああ切ないです…。
(翼を得て自由になったつもりでいても、実際のところ魔法使いのこころはずっと永遠に、蛇に絡め取られたまま。数百年と刻み付けられた呪は永遠に消えることはなく、自嘲孕んだ声は次第に震えて。一度発露してしまった感情は如何したって治まらず、淡紅の宝石から雨が零れた。)――……それとも、おまえが満たしてくれんの? 一緒に居たいってんなら、あの男のこともなにもかも全部ぜんぶどーでもよくなるくらい、あいして、慰めて。俺のこと、無茶苦茶にしてくれんのかよ………。(それこそ“不可能”で“無理”なことだ。ぐいっと淡紅に滲んだ涙を腕で乱暴に拭いながら、泣き顔を見られないようにと魔法使いは逃げるように横を向けば「……うそ。じょーだん、忘れて。」と。)
└飄々と自由を謳歌している魔法使いさまが実は愛を求め、虚無を埋めるために仕事と称し抱かれている…なんてかわいすぎます…。あいしますし慰めますしむちゃくちゃにもしますがんばりますシェノンならできます…、と青年になれば、と願ってばかりおりました。PLの中で攻めシェノンが浮かんだ瞬間でした、笑
「――…、…。…ぎゅう、としたら。あたたかいですよ。」
└ああああああああああ…!!!
(此方へと歩み寄る男から距離を取るよう、背を走る怖気から少しでも逃げるように、魔法使いの背に隠れようと身を翻した――処で“ユイ”の二音が耳朶を打った。刹那にして矮躯は地に縫い付けられ、逸らされた銀色は真直ぐとご主人さまを映し込む。印が植え付けられたうなじへと鎖が繋ぎなおされ、枷を嵌められる心地が背を這い、――失っていた記憶が波の如く脳裡を揺らめく。夢で見た黒き髪に銀の眼を宿す兄と、その影に在った青き銀髪に銀の眼のもうひとりの――数多居る奴隷の中、ユイの兄と語ったふたりの存在は瞳の色と彼等の幼少の記憶を手がかりにした、血のつながりを俄か信じ切れぬ思惟。小さき子を、年嵩の子を、思い遣り砕かれる心。遠巻きに眺めたご主人さまを慕う友の背。あ の雨の日に仕事を変わった友の顔ばせ。家畜の烙印を捺され、今日びまでのすべてが銀の少年の体躯に満ち満ちる。甘えと怯えの色を灯していた銀色は、利発的な凪に還らん。其処に居たのは魔法使いだけを認め求めていた“シェノン”ではあるまい、)
└ロールの描写が素晴らしいの一言で、読み進める度にシェノンくんが奴隷のユイくんへと姿を変えて行き、どんどんと知っていたシェノンくんが消えていくのが自業自得とはいえ辛くて哀しくて切なかったです…。
「――領主さまのみこころにそわぬ…とんだ所業を。申し訳ございません。勝手をしでかし、…領主さまの下へ帰ることもかなわず。逃亡者として首を刎ねられてもおかしくないでしょうに、…このようなところへご足労いただき、“ユイ”と名を呼び、記憶をさずけてくださるなんて。なんと感謝いたしましょう、…領主さま、まことにありがとうございます。」
└わかってたけど、わかってたけど…!この瞬間、ああもうあの甘えてくれていたシェノンが居ないんだと感じて途方もない絶望と悲しさに襲われました…自業自得なんですけれど、ね、ごめんなさい…。
……、……――そのご命令には、(囁きにも満たぬ小さな音は、命への応も否も宿さない。赦しも無く身を起こせば、主に寄り添うのではなく、傍らの魔法使いに身を寄せ。此の行為が彼の――領主さまの忠実なるスパイである魔法使いにとっては不利になるものと理解しながら、それでも“あいしている”との言葉に背きたくはなかった。
└自分やマティスさんの身に降りかかるものを理解した上でそれでもマティスさんへの愛を貫くというのはシェノンくんならではの選択で、普段はかわいいシェノンくんがとてもとてもかっこよく見えました。
(囁きにも満たぬ小さな音は、命への応も否も宿さない。赦しも無く身を起こせば、主に寄り添うのではなく、傍らの魔法使いに身を寄せ。此の行為が彼の――領主さまの忠実なるスパイである魔法使いにとっては不利になるものと理解しながら、それでも“あいしている”との言葉に背きたくはなかった。此の身は確かに“ユイ”の縛りを、記憶を取り戻せど、心は“シェノン”に堕ちている。うなじの枷が呼吸を妨げるような、厭な感覚が纏まりつくのにも躊躇せず、銀はご主人さまから、他者とするべきいとしき魔法使いへと――幸せを繋ぐ者の名を与えた青年の、美しき淡紅へと捧げられた。)あなたさまのお傍に、…――このいのちが尽きるまで。どうか、…”幸せの名“と共に、在らせて。
└リアルに「!!?」となりました。ビックリして言葉が出なくなるというのはこのことだな、と。あの頃のシェノンくんはもういないと思っていただけにこの展開には驚きつつも喜びつつ、そんなことしたら隷属の印が…!と喜んでばかりではいられない状況にガタッ。そして案の定齎された痛みの描写に申し訳なくて頭を抱えました……PCがPCなだけにずっと傍に居て、といえないのも苦しかったです…。
(淡紅を霞める水の膜が何であるのか、其れが涙だと気付いたのは冷たい滴が頬を伝ってからのこと。幼き指先の施す柔らかな愛撫は今まで此の身に受けて来た何よりもあたたかく、優しく、其処より伝わる想いに瞠られた淡紅から更に涙が一筋零れた。籠められていた想いは紛うことなき“愛情”。)………、鎖で繋がれてる奴隷で、俺の言ってることの半分も意味を理解してねーくせにさぁ、…簡単なことみたいに言うなっつーの。(真正面の銀を見詰めて呟く様は何処か恨めし気でもあっただろう。愛を囁く囀りは違わぬ眩しいまでの花咲みと共に。淡紅に降り注ぐ幼く拙い唇はどんなキスよりも一等甘く、こころが幸福に満たされれば淡紅を濡らしていた雨は已むだろう。)
└今猶このマティスさんが夢かと思うことがございます…、このまま行ければまた別の道があったのでしょうか。
└ここのシーンがとても綺麗だなと思ったので。
「――ッな、おま、…バカ!」
└忠実なスパイさまなので捨置かれるかなあ、と思いきや…声を荒げた上に治癒の魔法までしてくださいまして。驚きで一杯でした。
(以前であれば、少年と出会って間もない頃の魔法使いであれば少年が苦しむ姿を見た所で肩を竦めて静かに見遣るだけだったに違いないが、今はもうそうではない。己の中の少年の存在の大きさを自覚してしまってからでは苦しむ姿を、助けを縋る幼き手を嘲笑い放っておくことなど出来ず、少年の華奢な背中に――印の施されたうなじに手を当て、其処へと魔力を流し込む。治癒魔法は其処まで器用に使えぬし、此れで隷属の刻印の与える痛みを消すことは出来ぬかもしれないがそれでも少年の躯に走る激痛が少しでも緩和されれば良いと治癒を施しつつ、)
└こう…マティスさんが治癒の魔法を、それも領主さまの前で行ってくださるのがびっくりでびっくりで……、未だ信じられぬ心地です、笑
「――俺の望みは、この子。この子が欲しい。」
└寝ぼけ眼でレスを拝見し、飛び起きたことを良く憶えております。マティスさんが如何出るのか解らなかったので戦々恐々としつつも、…あのお兄さんがシェノンを望んでくださるなんて、思わないじゃないですか……。
今までの働きで見合わねえっていうんでしたら……此の躯、どうぞ望むままにお使いください。今まで以上に、領主サマの望むように動く駒になります。だから…、それでもだめ、なら……せめて命だけは、赦してやってください。(領主に少年の居場所を報告した当初から立てていた計画では望みは“少年が欲しい”ではなく“少年の命を助けて欲しい”であったのだが――もし、叶うなら。しあわせをまた共に紡いでいけるならと、微かでも思ってしまったが故。)
└この子が欲しい、の衝撃が落ち着いたのちに、ここまで想って考えてくださっていたと、涙が止まりませんでした。領主さまに忠実なスパイが懇願を紡ぐなんて、その対象になれるなんて、…とても嬉しくしあわせを頂戴致しました。
(無く凭れていた少年の体温が離れ其の銀が再び淡紅と交われば、ほんの些細な変化であったが故に少年は気付かれなかったかもしれないけれど、魔法使いのこころの動揺を示すように双眸は微かに瞠られた。)
└ここで拒絶が入るとは想像しておらず…、拗れはじめた場面ですね。
(――其の顔立ちは宿す色は其の声は、なにひとつとて変わらぬ己の知るシェノンのものと違わぬけれど。 違う。)――…、……っ。(伸ばされた手を拒むように静かに払い除けたのは無意識での行動だったと思う。姿形声は少年と同じ、だけれど少年が――シェノンが何時も魔法使いへと伸ばしてくれた幼い指先は、震えたことなどあっただろうか。どんなに鬱陶しいと振り払い拒んでも躊躇なく触れてくれていた其の手は、今は拒絶に怯えまるで他人へと触れるかの如く震えている。そのことに勝手ながらも抱いた感情は寂しさであっただろうか、哀しみであっただろうか。己が招いた此の結果に後悔こそ無かれども、言い知れぬ痛みがこころを襲う。
└マティスさんってすごく臆病ですよね…可愛いですけれど。とても可愛いですが、切なく胸に響きました。
「…ああ言いはしたけど、俺はおまえを縛るつもりはねーよ。まだ籠ん中なのには変わりねーけどもう奴隷として城に戻る必要はねえんだし、思うままに自由に生きな。」
「……記憶を思い出したってんなら“シェノン”に囚われる必要だってもう、ねえんだから。」
……僕はもう、魔法使いさまが知っている“シェノン”ではありません。ユイ…、――忘れていた記憶はすべて、思い出しました。もうあの時みたいに“お兄さん”って甘えることも、泣くことも…きっと、できません。領主さまの意に背いたから、大切な友人が僕の代わりに犠牲になりました。ぜんぶ、…すべて、受け止めて、受け入れて。知ってゆきます。あなたさまだけしか見ていなかった僕は、もう――、っ…それでも、よいですか。あなたさまと共に在って、…共に、生きて。あいして、…シェノンと、名乗って。(他人行儀な物言いは“良い子”であった名残、そして記憶を取り戻してしまっては――シェノンの甘えも涙もすべて憶えているけれど、感情を殺めて生きる少年には現今が精一杯。真直 ぐと魔法使いを見据え、猶も求めたのは彼をあいして、共に生きて往く事への赦し。このいのちが尽きるまで、どうか。彼をあいして、慰めて――しあわせを繋ぐ存在で在りたいと希い、震える指先がかの顔ばせへと伸ばされた。触れることが叶うならば、そう、と淡紅の傍らを撫そう。何よりも美しい宝石を愛で、彼をあいしていると伝えるように。)
└シェノンくんはずっと変わってしまうことを恐れていて、それでもマティスが領主様に密告してしまった結果記憶を取り戻してしまって、震える指先といい言葉といい節々に拒絶への恐れと変わってしまったことへの申し訳なさが見て取れて切なさに胸が張り裂けそうでした。ごめん…、ごめんね、何度謝っても謝り足りないです…。
(目の前の少年が魔法使いへ向ける感情は“シェノン”のものだけれど、恐らく其の思いは元の少年へ戻った今も変わらないのだということは真摯な言葉を聞けばわかる。けれど己がこころを満たし光をくれたのは目の前の少年ではなく、甘え慕ってくれたシェノンだったのだと――。)
「お兄さん、お兄さん、…マティスおにいさん、……おねがい、シェノンって、呼んで。シェノンで、在らせて……。」
└ああああ……切ない、切ない……こんなことを言わせてしまって申し訳ない……。
(シェノン――魔法使いに幸せを繋いでくれた少年。良く笑い良く泣き感情に素直な少年を最初こそ鬱陶しく思うこともあったけれど、共に過ごす時間を重ねるに連れ魔法使いは其の刻を何時の間にか幸福を見出し、楽しいと感じるまでに至り、遂には穏やかな其の日常を手放したくないとすら。事実少年を領主へ売り渡しはしたけれどこのしあわせが長く続けばいいと思うだけなら何度も何度も、何度も。けれど其れ以上に魔法使いが望んだのは少年の身の安全だっただけのこと。少年と共に在ることを諦め領主に従い其の機嫌を取ったのは、少年の命を助けて欲しいという“望み”を叶え易くする為の布石。あとは少年に真実を告げて絶望させ、魔法使いに嫌悪を抱いた少年は領主の許へと戻り元の生活へと戻る。そうなる筈だった、少なくとも此の朝の始まりまでは。でも、思わぬ言葉があった。ずっとこころに押し込め続けて来た感情を御し切れなかった。愛を囀る銀に淡紅が宿した感情もまた愛おしさに違いなく、苦しげに蹲る少年を見て無意識に唇から零れ落ちた言葉は奴隷の命を乞うものなどではなく其の存在自身と共に在ることを望むものへと変化して。)
(状況は変わった。記憶を取り戻した少年が必ずしもシェノンであらねばならぬことなど、“愛してる”なんて言葉で魔法使いへと縛られる必要などありはしない。しあわせを与えてくれた少年に今度は魔法使いが幸せを。未だ籠の中ではあるけれどそれでも手折った翼が再び蒼穹を羽ばたけるようにと願い告げた言葉はしかしそうではないのだと、激を伴った懇願となり返ってくる。過去のシェノンと今の少年とを比べてしまうことを恐れて逃れるように逸らした淡紅はしかし再び濡れた銀色に捕らわれ、真直ぐな想いを注がれてはもう逸らすことは叶わなかった。)……、シェノ…―――!(今までのように一緒に居たい。先刻まではもう甘えられない泣けないと言っていた少年の銀の双眸からは綺麗な涙の滴が零れ落ち、頬を濡らす少年の幼き顔ばせにはもう静謐さは宿っていなかった。其処に居たのは紛れの無い己の知る少年そのもの、思わず紡ぎ掛けた名が中途半端に途切れたのは唐突に柔らかな熱に包まれたが故に。肩や背に手を添えてやることも出来ぬまま紡がれる謝罪を、直向きな想いを、溢れて已まない冷たい滴をその身に受け止めて。沁み渡らせて。切れてしまいそうな幸せを繋ぐかの如く交わりは深くなり、嗚咽の呼気混じりに紡がれるは求める声、そして漸く魔法使いは気付くのだ。嗚呼、一番に少年を縛ってしまっているのは印でもなければシェノンという名前でもない――魔法使い自身なのだと。)
└胸を掻き毟りたくなると申しますか、とてもしあわせで甘いのに切なくって、…空恐ろしいとの言葉が浮かんでおりました。
いい。もういいって。……もう、わかったから。――……俺のシェノンは、おまえだけしか居ねーよ。(己を責めるような謝罪を止めたくて、其の想いは十分に届いていると示すように肩首に縋り付く水色の後頭部と其の背へそうっと腕を回して、ぎゅう、と。力加減に気を付けながら幼子をあやすように、込み上げる愛おしさを伝えるように其の幼き躯を抱き締めよう。)
└好きです、好きです…ただそれだけなのです。
(シェノン。その名を呼べば少年はきっと魔法使いの期待に応えようとユイを押し込め、シェノンであり続けようとするだろう。でもそれは少年の幸せに果たして繋がるのだろうか。本当は誰に縛られたくもないし縛りたくもないのに、今の魔法使いは少年に縛られ、そして少年もまた魔法使いに縛られているとはなんて皮肉なのだろう。)…どうしたらおまえを本当に“しあわせ”にしてやれんのかな、(互いを互いに縛っている状態では解決策は――否ひとつ、ないこともないけれど。)
└互いのしあわせの意味が異なることを痛感しておりました…。
(ユイとシェノンが溶け合った子どもが説いたことは、シェノンの想いを宿せどもユイの気質ゆえ感情には素直には在れぬとの、変容を告げる言の葉。もしそれが受諾されていたならば、穏やかに――八番目と幸せは溶け合い、ひとりの人格を形成するに至ろうが。青年の拒絶を契機にして、統合されつつあった自我は其々牙を剥き合った。ノースウィンドと云う鳥篭の中、鎖を嵌められたままの小鳥は其れでも限られた空を舞うことが叶おう。小さな蒼穹であろうとも自由の風を、一度は手折られた翼で翔けることは出来た筈。されど――広げられた翼は、羽は。いとしき手に拠って毟られ、地に縛り付けられた。宛ら蛇に絡みつかれ飛び立てぬ小鳥の如く、シェノンの心身は魔法使い――マティスの下に縛さ れし。幾重にも巻きつけた鎖は自縛にて、彼から心が、幸せが離れてしまわぬようにと強固に、雁字搦めに。シェノンで在ることが幸せなのだとうたうたび、祝福を彩るであろう言の葉はまるで呪いの如く幼きこころを染め上げてゆく。純粋であった愛慕が愛執に堕ちても猶、愛しさを伝えるばかりなれども。清らなシェノンがほの暗きユイに傾いてゆくのも気づかずに、少年は己の存在を青年に希求し、――紡がれた言葉に、包まれたぬくもりに、銀が驚愕に瞠られた。のち、安寧を孕み眇められ、いとしさを溶かした涙が零れよう。“俺のシェノン”その肯定が何よりも、こころに幸福を齎してくれる。)
└行動が裏目裏目に出て、シェノンくんがどんどんと深みにはまっていく様子にPLPC共 々土下座したい思いでした。シェノンくんには何度謝っても謝り足りないくらいです…、それでもあいしてるんです本当です…。
待ってんのかなぁ、と仰っておりましたのでお迎えに参りました! というのはスレの可愛さに応じて、だったのですけれど、笑 ロールや科白にて醸されるのもは何かに対する“覚悟”と”諦め”、マティスさんの言動も常より甘く穏やかで、これは何かある…、とその覚悟を崩さねばシェノンの明日はない、と日を追うごとに思うようになりまして。領主さまも中々お見えにならないようでしたので、シェノンの揺れる想いのままに、必死に噛み付きました。マティスさんは意思が強い方ですから諦めを崩せるのかも読めず、本当に体当たりでしたが…不意に零れた内面の柔らかさに、あいを憶え、恋を知り。シェノン的にはマティスさんを愛して“共に生きていく”ことしか考えが浮かばず、ユイに還ってもその指針は揺るぎませんでした。4th中はユイに戻って領主さまに従うことになるだろう、と思っておりましたが…マティスさんの弱い面を見たことと、“赦さないでね”の言葉に関するシェノンへの諦めに関して答が出たあとだったので、素直にシェノンで在る事が叶いました。レスの長さや内容、量からエンネの件を削り、それを領主さまに指摘されて揺らめき――最後の最後で関係性が拗れたこともありまして、友の事よりも魔法使いに堕ちた少年、ユイの仄暗さを孕む切っ掛け等になってくれましたねエンネは…。何処かで彼への贖いをしたかったのですが、終ぞする暇がないまま記憶が消えてしまいました……。4thは様々なことが御座いましたがマティスさんの軸をぶらす、生き残る、それが根底でした。
Lazaro & Cinq
……なあ、お前さん名前は欲しいって思うか。(少年からすれば唐突な問い掛けだったろう。然し、男からしてみれば彼と共にあると決めたあの日から何の気なしに考え、話すタイミングを伺っていたのだから、極々ありふれた問い掛けであった。少年を拾った日、名を忘れたと言う彼に名を与えなかったのは何れ思い出すだろうと言う考えひとつ、情を移さぬためと言う心情ひとつ。けれど、その内ひとつは最早手遅れにて信条は容易くも彼によって崩されてしまえば、名を与えぬ理由はもう殆ど残っていない。なあ、とか、おい、とか、坊主、お前さん。どれをとっても彼を呼ぶに不便はないが、しかし彼の道を傍で見届けると決めたのだから、まずは第一歩。もし彼が望んでくれるのであれば、少年の為だけに紡がれる名を与えたいと思うのであった。)
└名付けようと思えたのはとても大きな変化だったんだろうなと感じて。
「…なあ、おっさん。どんな名前だって名前がなくったっておっさんはおっさんだし、俺は俺で、はなづまりははなづまりだろ。なんでみんな名前名前って言うの?わかりにくいから?俺はおっさんがどこで俺を何て呼んだってあっ俺をよんでるってぜってーわかるぜ」
└この考え方、好きです。
……生まれたとき、何かに認識されたとき、認められたとき。お前さんがこの世界にいるって証明が、名前って形になるんだって俺は思ってる。(エゴでしか動けないならば、逸そ全てを自分本位で見てしまえば戸惑いもなくなるような気がして。彼が望まなかったらとは思うが、自らの考えを告げたのなら傲慢だとは理解しながら、再び問い掛けよう、)だから、俺はお前さんに名前を与えてやりたいんだ。……ただ、それでも、お前さんが望まないなら無理強いはしねェよ。いつかお前さんが名前を思い出したとき、俺はその名前を呼ぶんだろうな。
目の前を通りすぎ、少年の傍らに立った男が紡いだ言葉は、力を伴って少年を縛り付ける。少年の舌の刻印が鈍く光れば、男も魔力を感じる。逆らえば、少年に何があるかはわからない、ならば男が選ぶ道なんて限られている――少年が、何時もとは違う笑顔を浮かべたら、男も少しだけ笑みを返すけれど、きっとぎこちない。)
└ここでのラサロさんのぎこちない笑顔が、のちのちサンクくんに「笑えてねえ!」と指摘されてしまうことも含めてもう…たまらなく切ないです…。
……だから、なあ、お前さんは望まないかも知れねェが、必ず迎えにいくから。(そして、囁くように小さな声で約束を口にしたのならゆっくりと目を閉じ自らの魔力に意識を集中させれば、淡い光は彼の体を包むように纏わされる。男が得意とする治癒魔法は速効性のものを多用することが多いが、対象に纏わせればその対象が傷付くときに効力を発する遅効性のものも存在していた――少年が領主の元へと戻っても、その身に危険が及んだ時に致命傷とならぬように治癒する為に。淡い光はごく小さな光、誰にも気付かれないよう少年に渡ったのであれば、額を合わせたまま告げたのは、)……死ぬなんて考えるな、生きろよ。(懇願にも似た想いだった。どうか少年がこの言葉を胸に留めてくれますようにと、そう願いながら額を離し、立ち上がろう。)
「ラサロは領主さまじゃねえもん」
└「聞き分けがよかったら」というラサロさんの台詞に対してのこの一言にラサロさんに対する感情がぎゅっと詰め込まれているようで、あたたかくも胸が締め付けられるようでした。
(傍らに立った少年に気付けば翡翠は再び彼を映し、目を細め何をしているのかと問うが引き寄せられるがまま額に柔らかなそれが触れるのならば、一度、二度、瞠目しては彼の願いに情けなくも笑みが象られた。)…………願わくは、お前さんが幸せな夢を見たいもんだな。(まるで思い付きのようで、けれど悪戯気に笑う少年を前にすれば、絆される心は偽りではないから。だから、彼を想う願いを告げることくらい許されるだろうか。彼が幸せな夢を、出来ることなら彼と幸せな夢が見れますように――少しだけ欲張った願いを口にすることはなかったけれど、領主を追って去っていく小さな背中をその目に焼き付けて、どうか彼の歩む道が途切れることのないようにと祈りを捧げ、最後に音もなく唇が象った三文字の言葉は――、そう遠くない未来に邂逅誓い男の奇妙な日常は一先ず幕を閉じた。)
Lennart & Linaria
ふふ、なんだか最初の日みたい。……しょうがないですね。(手を差し出す彼の姿が始まりの日の彼の姿と被って見える。思わずといった風に上げた笑い声は彼に初めて見せるものだろう。今度はしっかりと笑みと言える笑みを浮かべつ。あの時と同じ言葉を敢えて選んで、リナリアは彼の手に己の手を重ねた。すっかり変わってしまった二人の世界で、ただこの瞬間だけが、あの日と同じ)
└そっと寄り添うような二人の世界が愛しい。
……お嫁さんにされるのはちょっと…遠慮します。…でもぼくも――(すきです。そう告げる筈だったリナリアの幼い本心は扉の向こうの光にかき消された。
└言えなかった“すき”があまりにも切なくて、おふたりの結末を知ってから読み返すと余計に泣いてしまいます…。
(目を剥くレナートの中のどこかで、何かがぱきりと音を立てた。硝子がひび割れるような音だった。ぱきん、ぱきん。段々と音が大きくなっていく。)……ぐ らなー、と……?、リナリア…?(男の耳が聞き慣れない名を拾った瞬間、 ばきん。―――其れが、夢の終わり。)り、な ッ、待って、リナリア、!(いとも簡単に離れていったちいさな身体を掴もうと伸ばした手は、虚しく空を切る。目の前で領主様に擦り寄る少年の笑顔は、男が封じ込めたつもりのものだった。明るい陽の下で、この場所だけが夜になったみたいに、レナートの双眸は澱んでいた。)………なんで……?やくそく、したのに。ねえ、わたしを置いていくの?ずっとふたりでわたしといっしょに居てくれるっていったのに!やっぱりお前もぼくをひとりにするんだッ!そうやっていつも偉いやつがみんな奪っていくんだなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!!(吐き出す言葉は支離滅裂で子供が喚く姿そのものだった。ぐしゃりと金色の髪を鷲掴んだ。熱い鉄で喉奥を焼いたような声だった。何かが砕けて、もうどうしようもなかった。―――其の場に膝から崩れ落ちた男が、もう一度少年へ手を伸ばす。だらりと力ない青白い手は、まるで救いを欲するかの如く―)
└この激情に圧倒されました。
└恐ろしいまでの発狂っぷりに拍手を送りたくなりました。
「…………ぼくたちの間には“なに”もありません。ひとりになんていたしません。元々ぼくは、あなたのものではありませんから。」
└プロフィールを見て、記憶が戻ればこうなるのかなとイメージはしていたのですが、実際は想像よりもずっと辛いもので思わず顔を覆ってしまいました…。確かに、グラナートに戻った彼にとってはその通りだなあと。この言葉がレナートに"リナリア≠グラナート"を決定付けたのだと思います。
今この場で喚いた事も絶望を味わった事も、男の記憶からは消えていた。レナートの中で築かれていた筈の大切な"何か"は、静かな音を立ててあっという間に崩れてしまったのだった。 ぐしゃり。 ―――さあ、部屋で眠るリナリアを起こさなくちゃ!)
└レナートさんのリナリアくんへの愛情が溢れてはち切れてしまったような、狂気にも似た描写に切なくもぞくっとしました。
Ruska & Lucht
えっ?(見つかった。自分の身内が。それなのに手を叩いて大喜び出来ないのは何故だろう。脳裏に過ったのは実感のない栄光の日々ではなく、ここに来て初めての日、秘密の洞窟に連れて行ってもらった日、へちゃむくれな少年と遊んだ日、はじめて魔法を見せてもらった日だった。開いていた魔導書を閉じ、小脇に抱えて立ち上がると腰を下ろした魔法使いと目線を合わせて…――暫く顰めっ面になったり、眉を歪めて悲しそうな顔をしたり、すっぱい物を食べたかのような渋い表情をしたりとまるで万華鏡のようにくるくると色を変えた末に、ぎゅっと魔導書を握ってこう告げた。)…ぼ、 僕は魔法使いになりたいんだ。…だ、から…もう少しここにいたい。………………………やっかい払い…しないで。おねがい。
└ごめんなさい。罪悪感に襲われて、すごい悪者になった気分でした。でも、優しくしないんです…ごめんなさい。
└普段が強気なだけ余計に胸にくるものがあるなあと。
幸せになれるかどうかは、私にもわからない。だが、ここで私に付き合って時間に取り残されるよりはきっといい。…ああ、そうさ。私は早く君を遠ざけて楽になりたいんだ。もうこれ以上私と共にいた誰かが死ぬを見たくない。魔法のために人が死ぬのはもう沢山だ…(少年が告げる言葉のひとつひとつが押し込めた心の奥を疼かせる。先日の光景が過去の情景と混ざって襲いかかってくるようて、穏やかな仮面を被っていた表情が苦しく歪められていく。翳された掌には目には見えずとも感じられる己が施した刻印。それは、自分がこの地を捨てられず目を背けているくせに離れがたい愛しい者らと繋がっていたいがために犠牲にした証だ。歪めた顔で真っすぐに刻印を見つめて絞り出す声。)その証はきっと私が解いてやるとも。君が人としてもう一度生き直すために、なんとしても。
└ルスカさんの本音が初めて聞けた時の嬉しさと切なさと言ったら…
└穏かな仮面という表現や台詞に胸が苦しくなりました。
…その魔導書が気に入ったのなら君にあげよう。だが、君を奴隷として返すつもりはない。(少年の肩へとそっと手を置いて彼を後ろへ庇うように領主との間へと一歩踏み出せば、穏やかさを取り戻した魔法使いが領主へと口を開く。)伯爵よ、縁あって拾ったこの奴隷が貴方のものとは知らず、長くの間お預かりする形となり伯にご迷惑をおかけして申し訳ありません。わざわざこのような場所まで出向かれるほど大切になさるのです、貴方へとお返しするのに異はありません。(背後に少年を庇う格好で恭しく応答する様は人嫌いではあるものの領主へと特別悪感情を持ってはいない故に。けれども、従順な僕でもない魔法使いはなおも言葉を続ける。)――しかし、素性を調べたところこれは貴族の生まれだと言う。奴隷としてこの命を早々に潰すよりも復爵して侍らせた方がこれから先いかほどにも伯の益となるでしょう。この子をベルムバッハの子息として、貴方にお返ししたいのです。(背にした故に少年がどんな顔でこの申し出を聞いているかはわからなかったけれど、彼の本当の望みを叶えてやる術を知らない今はせめて出来るだけ良い居場所を作ってやることが自分に出来ること)
└Fourthは正直、全部ベストシーンとしてあげたいのですが、この部分のルスカさんの格好良さは半端ないと思います。
………僕が貴族になったって……(脳裏に響くのは母親の静かに深い憎悪が込められた罵倒の言葉。父親の血を受け継ぐ自分が戻った処で復旧することが出来るのかなんて12歳程度の子供には分からない。領主の返事を待つ間、染み付いた薬草の匂いを嗅ぐように魔法使いのマントに鼻先を埋めて――初めて彼に甘える仕草をしたのはほんの数秒だけ、立ちはだかる男をひらりとかわすと領主の元へと向かった。――意気地なしの少年は、領主からの罰が何よりも怖かったのだ。)
└数秒でもその甘え方が頭に残ったので。
(此処この場に至るまでは領主への提案はそれで十分だと思っていた。それ以上に自分に出来る力添えはきっとないのだと。だけれども、離れる前に少年が初めて見せた甘える仕草が魔法使いの押し込めていた心を揺さぶる。このまま人の世に返して無かったことと忘れてしまうには僅かばかり傍に置きすぎた。己はもう、強気で自信家の少年の裏に隠れている愛に焦がれる柔くて脆い部分を見つけてしまったから。もう少し、もう少しだけこの子の傍にいてもいいだろうか。そんな思いが、さらにもう一つの提案を続けさせる。)
└一生交わることはないと思っていたんですが、Fourthでルスカさんとルフトゥが初めて心が通ったな、よかったなと涙が止まりませんでした。
「………私は、領主様にとって利益を齎す存在になりたいのです。ベルムバッハ家でもベルムガルド家でも構いません、この雨の魔法使いを後見人として迎え、奴隷として愛でられ尽くすよりも、愛するノースウィンド家を支える駒の一部となりたいのです。…何年掛かるかは分かりません、けれど、必ず、私は今までの御恩を返しに参ります。………ッ、…っぐ、…ぁ……――だからッ…どうか、どうか今日の不義理をお許し下さい…!」
└これまで面白い場面が多かったルフトゥくんが!こんなにもかっこいい!ここでのルフトゥくんの決意には語り手さんたちを見守る誰もがこころ震えたのではないかと思います。それぞれ運命と向き合う少年たちの中でもルフトゥくんの変化は特に印象深かったです。
(そして、扉がしまり再び戻ってきた日常で男が最初にとった行動は少年を正面から抱きしめること。)…よく言った。怖かったろうに、逃げずに良くやった。……痛かったろう(まるで息子にするように優しく頭を撫でて、我が子を誇るようにその勇気を称賛しよう。先のことを考えるのはそれからだ。)
└ぶええええ!!お父さ〜〜〜ん!!!と私がルスカさんに抱きついて甘えたかったです。
└ルスカさんは本当にいいお父さんだなあと思います…。
「…僕はあそこに戻っていたら一ヶ月も持たずに死んでいた。肉体的かもしれないし、それよりも早く心が死んでいたとおもう。……だから…繋ぎとめてくれて、ありがとう。」
└一度外の世界を知ったからこその言葉ですよね。
Lord
あなた方の家まで領主は現れましたが地下室への入り口には全く気付かず、家の中へと入ろうとドアノブを捻りました。
└決してそんな場面ではないということは重々承知しておりますが、無人だと気付かずに小屋に入ろうとする領主さまがあまりにもかわいくて、このまま放置してしまったらどうなっていたのだろうとついにやけてしまいました…。