五稜院征四郎 の場合

【a::あなたの華麗なる一日】
……ん?もう朝か。(五稜院の一日は、窓辺から差し込む祝福されし聖なる光――つまるところ朝日、から始まる。春の木漏れ日を思わせるような心地よい陽光に目を細め、五稜院はゆっくりと体を起こした。平素であればこのまま身支度を整えるところだが、今日は少し違う。体に付き纏う倦怠感に、思わず目を伏せた。首を回す。重たい。肩を回す。重たい。体全体が、咎を背負った罪人が如く重たい鎖で拘束をされているように感じられた。)……余としたことが、昨晩はつい“力”を使い過ぎてしまったな。血塗られた聖戦――…惨劇の場に将自ら戦地に赴くとは不覚であった、しかしこれも兄上達を思えば仕方のないこと……。この身に課せられし宿命(さだめ)……(――昨晩は、兄達が遊んでいるオンラインゲームに珍しく参戦し、つい夜更かしをしてしまった。普段は見ている側が専ら多いが、久しぶりの兄弟総出の協力プレイにうっかりテンションが上がって寝不足である、と。こんな感じだ。演技がかった口調や態度も全て五稜院にとっては息をするのと同等である程当たり前のことであるから、部屋の入口あたりに控えていた数名の執事達が今更動揺する様子もない。整列した執事達に視線を遣りながら、ベッドから起き上がった五稜院は当たり前のように両腕を水平に伸ばす。スッ、スッ――。数秒も待たずして纏っていた衣は全て取り払われ、(※下着は残している)代わりに皺ひとつないシャツが五稜院の体を包む。着替えを手伝わせるのも、選ばれし血族として当然のことである。そのまま顔を洗い髪を整え食堂へ向かう――その前に、五稜院は無駄に拾い部屋に相応しい、無駄にでかい窓を勢いよく開け放った。)はは、今日も世界は美しい!見るがよい、<<時の支配者(タイム・マスター)>>(※執事の田中さん)!!まるで余と彼奴……我が愛しき麗しの姫君との未来を祝福しているようではないか!(ふははははははと悪役宛らの笑い声を響かせれば、突然の大声に驚いた小鳥が周囲の木々から勢いよく飛び立つ。その様すらも己への祝福と捉える男は、今日も今日とて自信に満ち溢れた笑みを浮かべ真っ直ぐと輝く未来だけを見つめていた。 輝く未来――姫路輝夜と結ばれる、その未来だけを。)