むかしむかしの東京郊外のことです。
かつてわが国には、日ノ本の国のあまねく未来を背負う
優秀な男児を育てるために創立された
気高き男児たちの園がございました。
時は流れ時は平成に移り変わっても尚、
男児たちの園は大きくあり方を変えません。
いまでは卒業すれば成功が約束されるとうたわれ、
熾烈な入学争いが繰り広げられる場所となりました。
桜の咲き誇る季節には、きんきらとした白い学生服で肩で風を切って歩く
狭き門をくぐりぬけた、ひとにぎりの優秀な男たちが講堂へと集います。
多くの政治家や研究者、成功者を輩出した男児の園、
その名は――“白薔薇学園”。
舞台はこの“白薔薇学園”。
時は平成ラストの睦び月、しんと息も白く凍るような新春のこと。
今日も成功を控えた男たちは、男の威信を懸けて争っています。
「ヒメ、俺のものになってくれ。」
「ヒメ、俺を選べ。」
「ヒメ……」
仙人だって雲から落っこちてくるような美貌の男たちが愛を乞うのは、
ひとりの男傾国の“お姫様”です。彼は言いました。
「ごめん、みんなのことは大好きだけど、
誰かひとりなんて選べないよ――……でも、」
でも?
「俺のためにキミとキミでキスしてみてくれない?
俺のためなら、出来るよねっ?」
えっ!?