柔和な顔立ちを活かした穏やかな微笑みで手の内を探らせない。チャンスを待たず自ら好機を作り出すためにも、ミスは少なく丁寧に。欲しがるものを与えて誘い込み、テクニックで凌駕する。大事なものに刃を突き立てられたなら、報復は鈍器でとことん折れるまで。相手の出方によって変化するプレイスタイルには、不二の性格がよく現れている。天才の呼び声に見合う実力もある。けれど、ときに自らをすり減らしてでも貫きたい情熱や執着は決定的に欠けたまま──…そんな退屈な心向きと決別する機会が訪れた冬。いま不二周助は天才と呼ばれた小器用なだけの男から、飢えに足掻き醜態を晒しながらも、何かを掴める挑戦者に生まれ変わろうとしている。