散歩も料理も、無心に取り組める…心が洗われるところが良いですなあ。（続いた声音はまるきりデューク渡邊のものだった。見ていなければそのまま彼自身の話が続けられたかのように――否、声のした先の姿もそのもの“デューク渡邊”がそこに在った。話を促すデューク渡邊のすぐとなりに、もう一人。）ああ、甘いものがお好きでしたら、ケーキも召し上がりますかな？……………プリッ。（鷹揚に女性陣へ並べられたケーキを勧める素振りを見せて、やがて象った境界が霞むように、双子のようにしていたデューク渡邊の一方は銀髪の男へと変貌した。もう眼鏡もしていない。）休日何しとる？だと。（超現象を起こしておいて素知らぬ顔。全く情報を落とさぬまま、同席した面子へ促すようにパス。）

うーんそうだな、俺は仁王のことよく知らないけど、得意そうなことから連想してみようか……例えば手品とかどう？今の、種も仕掛けも無いんだろうけど。休日にせっせと練習してる、と思うと親しみがあるよね。（当たり前だが大会等でしか顔を見かけない。ゆえに見慣れるほど仁王雅治という男のテニスに親しんでいるわけではない。が、いとも容易く行われた超常現象に対して初めましてのように突っ込むのも野暮で、サラッと流しながら、）みんなはどう思う？オフの仁王。（同席する女性たちに、あるいは割り込んできた者に問いかけた。別に、仁王に俺の過ごし方はなんだと思うと尋ねられた訳じゃなかったが。）ちなみに俺も、デュークさんと同じく散歩……散策かな。海の近くに住んでいるからビーチコーミングも兼ねて。

………、（温度差がすごい。合コンとは斯様な超常現象が平然に起こり得るとんでもない危険地域帯であったのか。人が増えたり別人になる一見とんでもない光景も、混乱招かず場が進行されていく。可笑しいのは自分だけかと浦島太郎気分で片目を拳で擦る。分身？分裂？幽霊？幻覚？）………オフどころかオンの意味すら分かり兼ねるんですけど、……種も仕掛けもないとは、……？（何かもう意味が分からなすぎて帰りたい。私も消されやしないだろうか。目立つのは本意でないと、取り敢えず波風立てぬよう勧められるが儘に唐揚げとケーキをひとつずつ。）………作詞作曲とか、お人形遊びでもしていたら意外性抜群で可愛らしいですね。（心にもない精一杯の世辞紛いを捻り出す。）そういえばデュークさんはかの有名な更家さんの末裔ゆえにウォーキングがご趣味なんですかね。（序盤で引っ掛かった汐見の心底どうでもいい独白は、別に答えを求めてはいやしなかった。）

どどどどちらさま！？（自己紹介とは何だったのか。ごしごし後輩と同じく目を擦った。新たに顔出す新人格にぶっ倒れそうになりつつも、此処で怯むようじゃなんやかんやで３年間もリンコー女子テニス部に籍を置いちゃいない。）お人形遊び、いいですねえ。リカちゃん派？ポポちゃん派？それともシルバニアファミリー派ですか？私はピアノと華道を少々……（※大嘘。）（凛と背筋を伸ばして、相変わらず傾げる首は四十五度をキープ。ゆる～く口元に笑みを浮かべながら、「お料理取り分けましょう！お任せ下さいな！」とちゃきちゃき動き始めるのは一昔前の手法？でもいいのだ、モテるためには何だってやりたいので。）ご本家デュークさんといえば、龍神をその身に宿してるだとかなんだとか。もしや渡邊さんも？うーん、ミステリアスで素敵ですね♡（四方八方全方位積極的攻略対象。秘儀・なんでも褒めろを駆使する語尾には平素縁のないハートマークが乱舞しっぱなしだ。）

（残飯狙うハイエナのいじましさで、恐る恐る近寄った1テーブル。おぢさん（汗）の堂々たる鎮座に最初は遠目で怯んでいたが、なんていうか、なんだか。ちょっと優しそう─かも？あのテーブル、穏やかそう─かも？と警戒心を薄皮一枚分剥がした接近、片口角が引き攣り）ちっ………！（ちわ～っ！とキャラブレ甚だしい軽やかな挨拶をし損ねた一語だけが飛び出た。舌打ちに聞こえてしまったかもしれないと青ざめ、結局上手く会話に入れず。女側に並べられたショートケーキを無言で2個も無断で取るスイーツ泥棒に成り下がるがこれがホントの目的。でもこれだけは言いたかった。）センパイ、いつもそんなハートつけないじゃん…。（アシストしねえ愚かな二年、回れ右で退散。）

（チームメイトの自己紹介後が気になって視線を送った1番テーブルは、やはりと言うべきか女性陣たちの戸惑いの表情が見て取れた。おいおい、とまた諌めるようにテーブルへと向かったがそこにあったメニューに「お、」と表情を一変させて）おい！ローストビーフ余ってんなら貰っていいか？え？……舌打ち？（仲間割れ寸前？のハイエナ二匹目。くるっと退散しようとしている一匹目の去り際の言葉にぎくっと表情を引き攣らせて）いやあ……そういうのは言わないってのがお約束ってもんじゃないのか？まあ……こいつら相手にペテンなんて諦めた方がいいぜ。佐伯？だっけか、こいつも油断なんねえしよ。（なんて言いながらひょいひょいと余っていたらしいローストビーフを自分の皿に摘んではこの男も回れ右。）あ、このテーブル、詐欺が横行してるらしいから気をつけろよ。（なんてすれ違いざまの影に一言余計なお世話。自分もひょこっと泥棒しているくせに、特別警戒区域に1番テーブルを指定。）

…その詐欺、広がってたりしない？（目指せ女の子全員とお友達。席で大人しくしているわけがないこの男が、気の向くまま足を運んだ先ですれ違いざまに掛けられた一言と別のテーブルで怒号が飛んだのははたしてどちらが先だったか。）やっほ。男が少なくなった今がチャンスってことでお邪魔するよ。（手を振りながら、仁王が座っていたであろう席に着席。）このテーブル、詐欺が横行してるって聞いたけど女の子たちは無事かい？（心配するような台詞を言いながらまずはリンコー生徒のご尊顔を拝する。）う～ん、やっぱどこを見てもカワイイ子しかいないなぁ。みんな彼氏いないのが不思議なくらいだよ。（――言いながら、脳裏に過るのは先程の自己紹介。いや個性豊かなのは良いことだ。）ね、どう？誰かいい人見つかったりした？（投げる質問はカオス化しているかにも思えるこの合コンを楽しもうとしているそれ。）

え～♡みんな偏差値高いけど～、ブン子ちゃんは～、綾野剛みたいなシュッと系イケメンとか～、吉沢亮みたいな可愛い系イケメン求めてきたから～、ちょっと期待外れっていうか～。でも～、美味しいものくれるなら～、千石クンのことすっっごくかっこいいってなるかも～♡（鬼の居ぬ間に洗濯とは正にこのこと。脊髄に刻み込まれた怒声の轟くテーブルより少しでも距離をとるべく流れ着いたのはローストビーフ馨しい鬼の元生息地。ひとり減ったスペースにぎゅうぎゅう割り込もうとする肉食系女子（仮）は遠く離れた自席より持ち寄ったマイ皿にえっさほいさと机上に並ぶご馳走を我が物顔で積み上げる。）そういえぱ6番テーブルにもかっこいい系男子居たよ～♡赤い髪で～シュッとしてて～可愛い系の～丸井くんっていうんだって♡（男を称える語彙の少ないローストビーフジャイアンは、有益な情報の見返りにとローストビーフの大皿を引き寄せ、大層ご満悦だった。）

（口の汚れは指ではなくご親切に頂けた紙ナプキンで拭いた。小腹が満たされたならテーブルから動かず船を漕いでいたのだけれど、見覚えのある赤髪を視界に捉えたならばぱあと目をかっ開く）丸井くん！！（名前を呼びながら近づくは1番テーブル。話の流れを横から聞いて、ひょっこり顔を覗かせた。）あと丸井くんはテニスも超かっこE～！今度一緒に練習したい！（推薦状と一緒に願望まで垂れ流しながら、唐揚げをひとつつまんで。）リンコー？の人のテニスも見てみたいC～。ミクスドとかできたら面白そう。（何でも言うだけならタダではあるので、小皿に盛った唐揚げ片手に目があった人物に問いかけてみよう。今は割と元気なもので。）唐揚げ食べた？うまかったよ。