（和やかな空気の中に大仰な身振りと声が響けば視線はそちらへ。）あはは…本当、入江くんは演技が上手いなぁ。オレも見習わないと。（指先で己の頬を掻きながらそんなことをぽろりと零し、次ぐ問いかけには首を捻る。）うーん、…失敗談。そうだなぁ。本当にちょっとした失敗談だけど、自販機でホットとアイスを買い間違えちゃったとか…、（ここまで言い終えてからあまりぱっとしない己の話に思わず苦笑い。）オレってラッキー千石って呼ばれてるくらいには結構ツイてるんだよね。失敗しても、結果的にラッキーに繋がったりしてさ。間違えて買ったホットコーヒーも、その後いきなり雨が降って気温も下がったからホットで良かった～ってなったんだ。　…あ。オレ、占いが好きなんだけど、運気を上げるためのラッキーカラーとか興味あったら声かけて！特別に占っちゃうよ。（なんて最後にアピールを付け足せば「キミは？」と視線を向ける。）

ヒヒヒ、オトコのヒスかと思ったヨ。白湯でも飲みナ。（激昂する様に愉快そうに笑みを零せば、白湯と言いつつもお冷を滑らせてから、曰く幸運を所持するらしい橙頭の彼の言葉に眦を細め）ほォ～～ン？ラッキークン…キミ、「オレ手相が見れるんだ♪」トカ言っちゃってぇ、うちのカワイコちゃんの手を握るのかィ？……どォなんだィ！？（力みが偶然なかやまきんに君もどきを産んでしまった。ケッ、とやさぐれることで諸々を有耶無耶にすると一度ジンジャーエールを煽り、）羊毛フェルトに針刺すのが快感でヤメられないんだけどサ、この前手がスベって………ミライぃ、指に何mm針埋まったと思ぅ？（元部長の次に愛する部員へと問う様は解ではなく反応欲しさに。）そこのキミは聞いてル？アタシはじゃァなさんだヨ。ヘビのアナでじゃ（省略。何気に律儀であるが、彼の反応は度外視の独り善がりに近かった。）ま、誰だって失敗はするよネ。天才だって人間サ。

JACOMが……JACOMが作動しょーる……（刹那なかやまきんに君と化した同校の先輩の様子に、蛇穴式セコムの発動を識る。けれども止めようとは思えないまま、やさぐれる先輩の横でズズ……とストローを鳴らした。りんごジュースが消えた合図だ。）ぁいった、（耳に風穴何個も開けようが、痛そうなもんは痛そう。ついついしかめっ面になる。）え、それ想像さすんすか？……いやけど蛇穴先輩やったらmmとか言わんとcmでイきそーな気ぃする……（実際のところは――…？なんてチラリ彼女の指先へ向けた目線を、またチラリとテーブル全体に向けた。）……何が失敗てうちがココに居（げふんっ）……、…あー、と、……Switchにジュース零してもーた、とか……？　まだ電源付くけぇ中までは染みんかったんじゃ思うけど。……ゲーム機とかスマホとかの機械系に飲みモン零すん、ぼっけ心臓に悪ぃ。（ああ、思い出したら心臓が痛い。）

うん、起きてるよー、じゃ～ねさん。（半スリープモードの身体は聴覚と脳の同期にバグを起こしつつも、社交的な人間の多いテーブルの空気に身を馴染ませていた。）それはちょっと分かるかも。俺もスマホ見ながら寝てたら画面によだれ垂らしてたことあったC～。（心臓を痛めていそうな彼女にとっての分かるポイントが如何ほどかは定かではない。相槌を打ちながらピザを齧ればチーズが伸びる。）失敗っていうか、そーやってよく寝て岳人とか…幼馴染によく怒られる。でも毎回起こしてくれるから優C～！（悪びれもせずに緩やかな笑みを添えて。）千石くんみたいに寝て起きたらいいこと起きないかな。起床にも一文の得くらいはあってもいいよね（都合の良い諺を夢見ながら、ピザを頬張り終える。口許についたソースの違和感を指で探りながら、「紙取って～」と伸ばした手を救ってくれる相手は現れるだろうか）

（禄に居座る事のない教室では、それでも室内に飛び交う多くの雑音を耳にする機会がままあった。だィだィ反復される語尾はどこかで聞き覚えがある。記憶の片隅で主張しはじめる、洗濯科学の洗剤CMくらいやり過ぎな白いタンクトップ姿の筋肉男を拒絶しようと顎を引いた序、フケてしまえと撤退試みる足は無意識にも踵を着地させていた。大手警備会社二大勢力の均衡をJACOMは壊し始める気だろうか。）千石、テメェはタピオカばっか吸ってそうなツラしてんのにな。（千石が気に留めているのはホットかアイスかという点に感じられるが、そもそもコーヒーを選択する嗜好の傾向にこそ妙に意識が留まる。）指で構うな。口についたソースが広がんだろ。（芥川の口許を拭うのに適したナプキンの類は遠く、知ったこっちゃねぇなとばかりの亜久津は一瞥と小言を投げるまで。親切をふるう役回りはそれに適した人材にパスを決め込んだ。）アイツ。紙くれ、だとよ。

オーウ、アタシ？（3年のオンナんとこ回ろうと思って歩いてきたら、まるで自分のテーブルから着いてきたみたいになってしまった。意外と優しいとこあんじゃねえかこのヤンキー……雨の日の捨て猫に傘とかあげるタイプ？と思っていたらナプキン係に任命されるも、この女は別に親切向きではない。）しゃーねーな、特別ねおネムちゃん。かわいい顔拭きな〜。（紙ナプキンを差し出しながら特別を押し付けた。そうして蛇穴と茨木に構われようとしつつ、それが成功したか否かは定かではないものの「何話してたの」とはゆった。）野試合で相手ボコボコにしたったんだけど、はしゃいでジュース買おうとしたら財布の中身ぶちまけたこと。チョーシ乗るもんじゃないよね、やっぱさ〜……。わかってんだけど……。（満足するまでテーブルに居座ったら、また違うテーブルに顔を出しに行くだろう。立ち去る間際、誰かと肩がぶつかって。）あ、めちゃゴメン。

（にこにこしてはいけない。分かっていてもどうしたって、幼馴染が周囲と会話している姿が嬉しくてつい表情筋が弛む。そんな折、）だいじょ、…あ！さっきはどうも。（二の腕付近に感じたのは軽い衝撃のみ。大丈夫ですよと告げようとした所で、ぶつかった相手が先程どうぞどうぞとターンを譲り合った女子生徒だと気付けばぺこっと会釈を落とす。「オレも余所見してたから」とおあいこで帰結して、折角なので個性的な面々が集まる席にお邪魔します。）失敗しない日の方が少ない気がするけど…魚を捌いた時に骨の削ぎ落としがあまくて、食べたら骨が刺さったよ。あれは痛かったなぁ。（席によって違う話題にも乗って、横目でやや要介護な彼を見遣る。何かあれば補助する心積もりではいた。）………と、そろそろ戻ろうかな。お邪魔しました。（暫しの談笑後、癖で箸入れや空の皿をまとめ、机の上を軽く片してから4番テーブルへと戻ろう。）